【プロセカ】短編集 (ページ13)

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4-2＊青柳冬弥＊(終) ページ13

「あ、あった…！」

あれから、数十分掛け二人で花壇の周辺を探し回った。
どうやら鍵を見つけたようで、両手でぎゅうと握り締めながら安堵の表情を浮かべていた。先程までの泣きそうな顔はもう何処にもない。

冬弥にとって、Aのころころと変わる表情を眺める事を好ましく思っていたのだが、だからと言って悲しい顔も見たいという訳ではなかった。

何はともあれ、無事に見つかって良かったと思う。彼女に気付かれない程度に、静かに息を吐いた。
ふと彼女の手元を見ると、その鍵には見覚えのあるものがぶら下がっていた。

「なぜ、こんなものをまだ持っているんだ…？」

「あっ、これ…？だって、これは冬弥くんからの大事なプレゼントなんだよ？鍵も大事だけど、それ以上に無くなったら困るよっ…」

「…そうか」

冬弥とAは互いの母親が親友で、その繋がりで昔からそれぞれの家にお邪魔しては良く遊んでいた仲だった。それは思春期に入る中学時代までの話のため、神山高校の同級生＿彰人や白石でさえも知らない関係性だ。

彼女の鍵に付いている物は、小学校の遠足で動物園でのお土産としてプレゼントしたうさぎのキーホルダーだった。今思えば彼女も遠足で同じ場所に行っているのに渡すとはおかしな話である。

宝物を見るような目でそれを眺めるAを見て、何となく胸の奥が熱くなっていった。それはフロアのボルテージが最高潮に達した時のような。

あぁ、大事なことに気付けなかった。自分は彼女に＿Aに贈り物をするほどの、淡い恋愛感情を抱いていたのだ、と。

「A、この後時間はあるだろうか」

「えっと、鍵も見つかったしもう家に帰るだけだよ」

「友人がオススメしていたカフェがあるんだが、一緒に行かないか？Aが好きなモンブランも取り扱っている」

「モンブラン…！え、行きたい！」

あからさますぎる発言かとは思ったが、悪くない反応で安心した。ただでさえ中学に上がり話さなくなってしまった相手だ、これは彼女と話す事が出来る良い機会だと思った。

カフェを気に入ってくれたら、それを口実にまた誘ってみるのも良いかもしれない。その次はショッピングモールへ行ったり、司先輩のいる日にフェニックスワンダーランドへ行くのも良いだろう。

冬弥は脳内でそのような「いつか」の計画を立てていた。練習に参加出来ない事への罪悪感はあるが、相棒に伝えた通り遅れは明日取り戻せば良い。彼女と肩を並べて、花壇を後にした。