二話 ページ2
となると、狙いは眼球なのだろうか。でも一体何のために……義眼でも作るつもりなのか。いや。いやいやいやそんなことはいい。何を余計なことを考えてるんだ。肝心なのはどんな理由があろうと人が殺されたことだ。
「なるほど。それで犯人はどこに逃げたのかな？」
僕は再び同じ問いを投げかけた。その答えはまだ聞けていない。
「さあ……私のほうが先にその場から離れてしまったので」
苦笑混じりにそう言う彼女はとても凄惨な現場を目撃したようには見えず、まるで天気の話でもしているかのようだった。
「『両目を奪う理由は残った片目は観賞用にしたいから』と言ってましたね。『流石に一日中鏡を見ている訳にもいかないから』と」
「ど……」
どういう意味なのかと言おうとして口をつぐむ。『どういう意味』かはすぐに気づいた。先程の予想はあながち間違ってはいないのだろう。
「なんでも自分の右目が嫌いみたいなんです。それで美しい目を移植したい、みたいなこと言ってました」
思わず『わざわざそんな大それたことしないでカラコン買えばいいのに』と考えてしまった自分を蹴飛ばしたくなる。うっかり口に出せば殴られこそしないものの、こっぴどく叱られることは間違いない。悪い癖だ。
「ところで、犯人は何故君の学校に広めることを頼んだのかな。何かこだわりでも……」
思わず後ろを振り返る。先輩警察官が居たら『人が死んでいるのにこだわりとかそういう問題じゃないだろ』と怒鳴られそうだ。
「私の学校に通ってる子に興味があるみたいです。『とても美しい瞳をしている。彼女に自分の存在を知ってほしい』と。『身体から外してしまえば魅力が半減してしまう。感情一つで色が変わるのが絶妙なわけだからあの目はあの場所に留めておくのが一番だ。だから目を奪う代わりに彼女を閉じ込めて自分の物にしたい』。あ、それと『通学路で頻繁に彼女の姿を見ている』とも言ってました」
「その……殺人犯が狙っている生徒に心当たりは？」
「ないです。彼からも『目が綺麗』としか聞いてなくて。でも、個人的にそこまで綺麗な目をしてるなら興味は湧きました」
「そうか」
保護しようにも誰を狙っているかわからない。
富岡チトセは『そうだ』と思い出しように口を開いて笑う。
「はっきり言ってあの先生が殺されたの、せいせいしてます。小学生扱いするわ、嫌みたらしいわ、贔屓するわ、皆もうんざりしてました。いい気味ですよ。フフッ」
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作者名：田無苑珠 | 作成日時：2017年4月21日 20時
