止まらない、止まれない【usss】 (ページ10)

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赤ページ10

「あ、いや、全然大丈夫ですよ」

と、頭を猛烈な勢いで下げた坂田に言うと、坂田は顔を勢い良く上げ、良かったー！とホッとした表情で叫ぶ。

うらたといた時も感情が豊かな人だなとは思っていたが、中々に個性が強いな、と思う。

「坂田、Aちゃんドン引きしてるで」

「まじ？」

表情に出ていたのだろうか、センラがそう言う。

…あれ、いつの間にか、ちゃん付けで呼ばれてる？

「俺は坂田！A、改めて宜しくな」

坂田が右手を差し出して来たので、私も右手を差し出して握手を交わすと、センラが俺も握手したい！と言い出したので、センラとも握手をした。

「すべすべや～」

「きっも」

「きっもとは何や！」

坂田がセンラと話す時に垣間見せる、このだらけた感じが、彼の素なのだろうかと思うと同時に、駄々を捏ねていたセンラが、少し可愛く見えてしまった。

この感情はきっと、園児に対して可愛いと思う感情と一緒な気がする。

年が同じであろう男子に思って良いものなのか…と、疑問に思った。

「うらたんは何て？」

「一番最後がいい～って嘆いてたで」

「自業自得やんな」

けらけらと笑うセンラと坂田に、私はうらたが二番目か三番目なのだと悟る。

話を聞くと、うらたの期間は夏休みまでの日数調整として入れられている様なもので、本当にうらたといる期間はほぼほぼ無いらしい。

「見つけたのに黙ってたうらさんが悪い」

と坂田は腕を組み、自らの言った事に頷きながらそう言い、それにセンラも笑いながら同調していた。

センラは手ぇ出してないよな～？と坂田は言うが、断じてしてないとセンラはきっぱりと答えた。

思わずセンラを凝視すると、センラはふぅと一息吐きながら私に目線で言うな、と伝えて来た。

「そろそろ5限目が終わるチャイムが鳴るねんけど、それが始まりの合図になるから、そこからは坂田と離れず行動してな」

「…離れず？」

「そこまでぴったりくっついてなくてもええんやけど、離れないでっていうお達しがあるんですわ」

センラはスマホをチェックすると、もうそろそろ時間やわ、と教室を出る支度をしながら、思い立った表情で私を見た。

「Aちゃん」

「センラ…？」

─キーンコーン…
　

「時間や、それじゃあな！」

「おーう、センラ～」

「……」

今日一の笑みを見せて、センラは教室から去った。

チャイムの音に掻き消されたセンラの言葉は確かに、好きです、と言っていた。

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