止まらない、止まれない【usss】 (ページ9)

今日:4 hit、昨日:5 hit、合計:54,305 hit

・ページ9

「え…」

口を一文字に結び、耳まで赤くしたセンラの姿に、思わず声が漏れてしまった。

途端にセンラは両手で顔を覆い、勢い良くそっぽを向いた。

「俺……お嫁に行けへんわ…」

「いや何で」

…思わず突っ込んでしまった。

ぷりぷりと、両手で覆った顔事体を左右に揺らしているセンラを見て、何だこの人は、と思わず顔が歪み出す。

さっきまでは同じ学年とは思えない位、大人びた行動を取られていた筈…。

自分でも分かる程に細まった目。

所謂ジト目で、目の前のセンラのくねくねとした動きを見ていると、センラの動きがピタッと止まった。

「…センラさん？」

「来たわ」

「え」

顔を覆っていた両手が離れると、センラはさっきと違い、キリッとした顔でドアの方を見つめた。

誰が、と聞かなくても分かる。

今日から過ごさなければいけない相手だろう。

そう言えばセンラに流されに流された。

どう考えてもこの非現実的な運命とやらに、私の有無を言わせずに巻き込まれてしまうのか。

不服な筈なのだが、何故だか、本能が受け入れろと叫んでいる気がした。

「あ、せや！」

と、センラが何かを思い出したのか、丸めた右手をポンっと、左手の手のひらに置いた。

「さん付け、せんでええよ。それに、タメでええから。センラって呼んで」

「……セン、ラ…？」

「ん、よく出来ました！」

さん付けしたら、お仕置きするで～！と晴れ晴れとした表情で、センラは私の頭を撫でてから立ち上がった。

思わず、何処に行くのかと言う前にセンラの服の袖を摘んでしまうと、センラは私の目線に合わせて屈んだ。

「もうそろそろ坂田が来るから、お出迎えするだけだけど……もしかして、寂しくなった？」

「！！」

図星を突かれた私に、にやにやとしたセンラは、改めて屈めた膝を戻して、教室のドアに向かった。

と同時に、コンコンと、ドアがノックされ、いらっしゃいとセンラは気の抜けた声で坂田に告げる。

ここはお前ん家か、という坂田のツッコミが聞こえてきた。

…坂田という名前に聞き覚えがある気はしたが、私が意識を失う前に謝ってきたこの男の事だったのか。

そして坂田は私を見た瞬間に、一目散に駆け寄って来て、

「さっきは、ホーンマにごめん！！！」

と土下座をしそうな勢いで、坂田は私に謝ってきた。

.