止まらない、止まれない【usss】 (ページ32)

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「お、重……」

あまり運動もしない非力な私の力では、上にいる坂田を退ける事が出来ず、下敷きになっていて動かす事も出来ない腕を脱力させる。
思った以上に坂田の顔が近い所にあり、心臓がどきりと跳ねる。もうキスだってしていて、もっと近い位置で坂田の伏した目を、鼻筋を唇も、何回も見ている筈なのに何故慣れないのだろうか。

すーすー、と静かに呼吸する坂田を見て、きっとこの、押し潰されて息苦しい状態のまま朝を迎える事になるのだろうと思い、諦めて目を瞑った。

その途端坂田がもぞりと動き出し、今までの圧迫感が無くなったと同時に、私の顔の左右に手がダンッと置かれた。

「ひぇ…」

勢いの良さに驚き、小動物の如く小さい悲鳴を上げてしまった。
ゆっくりと目を開くと、此方をじっと見つめていた真紅の瞳と視線がかち合う。
先程よりも、少し離れた所から私を見下ろしていた坂田の視線は何処か冷たかった。

困惑する私を他所に、坂田は私を下から上までじっくりと舐め回す様に見て来て、坂田に初めて嫌悪感を覚えた。
ふと、初めてセンラと会った時と同じ警報が頭の中で鳴り響き出す。

逃げなきゃ。

……でも、どうやって？

あの時無理にでもセンラから逃げようと動いていた筈の私が何故か、坂田には抵抗を示せなくなっていた。
逃げなければと思っているのに、考えとは裏腹に身動きが取れず、出来たのは、唾を飲み込む事だけ。

数秒の沈黙の後、坂田は口角をにまりと上げた。

「可愛い、本当に。A。全部全部可愛い。そうやって沢山考えてる所も、Aが俺の事を思ってる以上に好きになっちゃってる所も、俺から逃げられなくなっちゃってる所も、全部愛おしくて、めっちゃ可愛い」

全てを見透かされているかのような発言。
視線を合わせている坂田の真紅の瞳が、段々と濁り霞んでいくように感じる。
まるで、坂田であって坂田でないような、そんな気がした。

本当に逃げなければまずいと思ったのは、坂田が私の両手を私の頭上まで掬い、纏め上げた時だった。

止めてと言うだけの抵抗も虚しく、坂田は私の言葉を遮るように深く口付けをして来た。
くちゅ、じゅる、と坂田の舌が私の舌を無理矢理絡め取ろうとする荒過ぎるキスに呼吸がままならず、口の端からどちらのか分からない唾液がとろとろと垂れ出す。

坂田の熱っぽい視線も上気する頬も、私の思考を溶かすのに十分過ぎる。
坂田はキスをしたまま、片方の手で私の服の隙間から手を入れた。

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