止まらない、止まれない【usss】 (ページ26)

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学内では私のキャリーケースを引きながら、一歩先を歩いていた坂田だったのだが、校門を抜け、学外に出た途端に、歩くスピードを緩め、徐々に私と同じペースで歩き出した。

「坂田くんどうしたの？」

「いや、Aと初めて大学内で手繋ぎながら歩いたのに気付いて、緊張した」

手で口元を覆いながら、坂田はそう言った。

私もほぼ同じ事考えてた、と言うと、ほぼって何や！とは言いつつも、同じ事を考えていた事が嬉しかったらしく、繋いでいる手が少し大きく揺れた。

「で？ほぼって何や」

「私は緊張というか、あの浦島坂田船の坂田と手を繋いでるぞー！なんて囃し立てられたら、たまったもんじゃないと思って」

「確かに、それは有るかもなあ」

「まあ、あの状況じゃそんな事言われないんだろうけどね」

「……満更でもないやろ？」

「……うーん、どうだか」

「そこは肯定するとこやろ！！」

やっぱり、コロコロと表情を変える坂田を見るのは面白く、突っ込んでいる坂田の方が、肯定されなかった事に満更でも無いような顔をしている気がする。

「あ、コンビニ入る？」

と、坂田が近くのコンビニを指さした。

そう言えば個人的には手を引いていた坂田の後ろをとことこと着いて来たつもりだったが、今日から坂田の家に泊まる、と言う名の居候を始めるのだ。

坂田が引いてくれていたキャリーケースをハッと思い出し、私のだし自分で引くよ、と返して貰おうとすると、こんなに重い物引かせられん、と坂田は私のキャリーケースの所有権を返そうとはせず、渋々坂田に預ける事にした。

コンビニに入り、それぞれの夜食や必要な物を一纏めにしてカゴに入れ、レジに持ち運ぶ。

「「お願いします」」

と二人の声が揃い、思わずニヤけると目の前の店員に渋い顔をされた。

ぴっぴっぴっと手際良くバーコードを打ち、レジ袋に商品を詰めていくその様を、私達は見ていた。

「1003円です」

と店員に言われ、私も坂田もすぐ様財布を取り出したのだが、絶対に払わせまいと先に私がお金を置いた。

しかし、坂田は置かれたお金を私に返し、全額自分で出した。

「坂田くん、せめて半分出すから」

「大丈夫や。取っといて！」

次は私が払う、と坂田の言葉を飲み、坂田がお釣りを受け取ると同時に、店員に有難うございましたと伝えた。

その時だった。

店員と私の目が合った瞬間に、店員がぴたっと止まる。

「…あの？」

「好きです。付き合って下さい」

「は？」

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