止まらない、止まれない【usss】 (ページ19)

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またキスをしてしまった。

センラとキスをした影響かは分からないが、あの時に感じた怖さは無くなっていて、ただ単純にキスを受け入れた自分に驚いている。

不安に思っていた親に敷かれたレールの事すら忘れるほど、坂田のキスはとても優しく、暖かさを感じて、何故か心地が良かった。

私は、レールからとうにはみ出ていた事に気付きたくなかっただけなのかも知れない。

私にとって非現実的な言葉の羅列や行動を、受け入れられなかっただけなのだと。

好きだと言う気持ちは、今までで一度も言われた事は当たり前だが無く、何だか胸の辺りがむずむずした。

「坂田、くん」

「A」

言いたい事は私も、そして坂田もあったらしく、名前を呼ぶ声が重なる。

「先にいいよ」

「先に言うて」

「「……」」

再び重なった言葉に顔を合わせ、そのまま沈黙が訪れたのだが、お互いに段々とにやつく顔に耐えきれず、ぷっと吹き出した。

「ここまでハモる？」

「波長合いすぎやろ」

なんて、二人でくすくすと笑いながら座り込んだ。

「あのな」

「うん」

「本当は、今すぐにでも答え聞きたいぐらいやねんけど、もしいつか。心に決めたとしても、俺らには伝えんといてくれる？」

「…俺ら、って事は、私がもしこの生活で誰かを好きになる事があっても、って事？」

「そうやな、物分かりが早くて助かるわ」

こうやって伝えてしまったのになあ、と坂田は頭の後ろで腕を組み言う。

センラの言っていた、寵愛を授かるのは一人だけと言う言葉を思い出した。

正直、この生活で誰かを好きになる事なんてあるのだろうか、と思ってしまっていたが、目の前の坂田の純粋で真っ直ぐな所に惹かれてない訳でもない。

…この生活をしていなかったら、告白をOKして直ぐ付き合うなんて、軽い女になっているのだろうか。

この一週間で、坂田の良い所、悪い所も見つけたいとそう思った。

「……まあ、でも…このモヤモヤしっぱなしのまま一週間一緒に過ごすなんて、生き地獄みたいなもんやな」

にししと笑った坂田に胸が詰まった。

そうか、坂田は私の返事を貰えずに、この先過ごす事になるのか。

「ま、正直会ったばっかりやし、ちゃんとAの事知れてる訳やないし、この一週間楽しく過ごして、お互いの理解深められるとええな！」

「！」

坂田とは、本当に波長が合うらしい。

ご飯を食べ、お風呂も済ませた私達は布団に潜る。

明日からどうなるか、一抹の不安を残して。

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