止まらない、止まれない【usss】 (ページ15)

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「かえらなきゃ」

ぼそっと口から出た言葉に、坂田はなんでや？と言う。

門限で帰らないといけない、と言いたいが、この年になって門限で怒られるから帰るとは、恥ずかしくて言えず、坂田の問いに詰まってしまった。

しかし、両親の事を考えると、冷や汗が止まらなくなり、心臓の辺りがモヤモヤして、締め付けてくる。

早く帰らなきゃ。

「何かあるんか？」

先程から様子がおかしい私に気づいたのか、坂田は眉をしかめていて、掛けてきた言葉に少し圧がかかっているのが分かる。

「やっぱり、早くかえらないと親が心配するかなって！」

「本当に？」

「ほんと」

「でも、俺はまだAといたい」

「えっ」

思いがけず言われた言葉に、声が漏れた。

何故、そんな事を今言うのだ。

…坂田の言葉は勿論嬉しいが、親を怒らせるのは嫌だ。

今から急いで帰れば、ギリギリ門限に間に合う可能性がある。

「…かえる」

そう言い、公園から急いで出ようとすると、坂田が私の腕を掴んできた。

「帰らせない。理由言って貰わんと。…それに俺、そんな顔のAの事、放っておけんわ」

「っ！」

初めて言われた言葉に、心臓がどくっと動いたのを感じた。

坂田が私の方に手を伸ばして来て、思わずぎゅっと目を瞑ると、坂田は私の目元を指でなぞった。

なぞられた箇所がすうっと冷たくなる。

自分がいつの間にか泣いていた事が分かり、ゆっくりと目を開けると、そこには今にも泣きそうになっていた坂田が私を見つめていた。

「…なん、で…坂田、くんが…？」

「……好きな子の事、放っておく男なんておらんやろ。本気で守りたいんや、Aの事」

「！」

「会ったばっかの奴が何を、って思うかも知れんけど、それくらい俺はAに一瞬で惹かれたんや。だから、Aが苦しんでると……俺も、苦しい」

段々と掠れていった坂田の声と、坂田の思いが詰まった暖かい言葉は、私の焦る気持ちを鎮めた。

初めて言われた言葉に、理解が追いついていないのも事実だが、今の私の心の陰りを晴らすのに十分な言葉だった。

「A、教えて欲しい。何があったのか」

ずびっ、と鼻を啜り向き直る坂田に、私は口をゆっくりと開いた。

「…門限が、あるの」

「門限、何時まで？」

「！……笑わないの？」

「門限のせいでそうなってたんやったら、笑い事じゃないって事やろ」

また呆気に取られて居ると、その顔はおもろいけどなぁ、と坂田は左の口角を上げた。

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