止まらない、止まれない【usss】 (ページ13)

今日:11 hit、昨日:5 hit、合計:54,312 hit

・ページ13

むせた勢いで涙目になりながらも、坂田に応援され何とか牛丼を食べ終わり。店を出た私と坂田は当てもなくふらふらと、街中を歩いていた。

道中、坂田さんと呼ぶと、もうタメなんやから坂田でええで！と言われ、また距離が縮まったなと、少し嬉しくなっていた。

「俺、センラに嫉妬するなんてまだ子供なんやなーって思い知らされたわ」

緩く微笑みながら、頬を人差し指でかく坂田。

「でも、どうして嫉妬なんて」

「…実はそれが分からないんよな。…ただ、センラの事考えてるA見たら、機嫌損ねたわ」

そう言った坂田は、下を向き口を尖らせた後、何かを思い付いたのか、私の方を向くと、屈託の無い笑顔でこう言った。

「もしかしたら、Aに一目惚れしたのかもな」

…一瞬、時が止まったかと思った。

それは、私の事を好きだと言っているのと同じじゃないか。

心臓がどきどきと早鐘を打つ。

その場に居ても立っても居られなくなり、思わず早足になってしまうと、坂田もそんな私の歩幅に合わせて着いてくる。

「ど、どど、どうしてそんな事平気で言えるの！？」

「本当やからかな？」

疑問系で話している癖に、妙に余裕のある笑顔を見せる坂田。

先程の牛丼屋でもそうだったが、こんなさらりと恥ずかしい言葉を述べる坂田は寧ろ尊敬に値する。

「思っちゃったんよ」

「…何を…？」

立ち止まった坂田に気づき振り向くと、坂田は私の手を取り、言った。

「うらさんと一緒にいたAを初めて見た時にさ。守りたいって」

にひひ、と笑った坂田を見て、胸が高鳴った。

その瞬間に風が優しく吹いてきて、坂田の赤い髪がふわりと揺れる。

まるで恋愛漫画によく出てくるシチュエーションの様で、ロマンスの神様は本当に居るのだろうかと思ってしまった。

坂田は風の吹いて来た方向に顔を向けると、静かに、綺麗やな、と言葉を放った。

いつの間にか見知らぬ公園の一角に来ていたようで。

陽が落ちかけ、その公園は夕陽を隠す遮蔽物が無く、木々や遊具、ベンチ等全てが夕焼けのオレンジ色に染まっていた。

坂田は目をキラキラと輝かせ、久しぶりに綺麗だと思ったわ、と呟く。

そうだね、と言い、私もその光景を見ていると、坂田が此方を向いたのが分かったので坂田の方を向くと

彼は真剣な瞳で私を見つめていた。

「……坂田、くん？」

「………」

.