七七と鍾離 ページ4
何故か七七ちゃんにひどく懐かれている。お菓子屋を営んでいるのと、売れ残りで廃棄予定のお菓子を1人でどうしようか悩んでいると颯爽と現れて平らげていく。それだけの関係なのだけど。
店先の小さな看板や暖簾をしまっている最中、その真っ白な肌の女の子がやって来た。そして、わたしに近寄って鎮座しているお菓子を指さす。
「A……食べて良い……？」
どうぞと言いながら売れ残りのお菓子の載ったお皿を渡すと、きらきらした目でお菓子を頬張り始める。無表情だけど、顔に跨る札をどけながらもひもひと口にしている。
可愛すぎる、子どもができたらこんな感じなのかな。でも、お付き合いしている人もそういう関係になりたい人も身近にいないから、遠い未来かもしれない。
「成程、僵尸の娘が出歩くのには理由があったのか」
「……？あなた……誰、だっけ？」
「鍾離だ。そこのお嬢さん、俺にもその焼き菓子を売ってくれないだろうか」
急にすらっとした高身長の青年がやって来て、お菓子を売って欲しいと名乗り出た。彼は鍾離さんで、結構頭が良いが気が付くとふっといなくなっている。時たま往生堂に入っている。
廃棄予定だからただで良いと渡そうとするも、彼は少し目を見開いた。
「菓子は鮮度が命で廃棄予定は分かるが、それを抜きにしても払わなければいけない」
「あなた、お金は……？」
「ああ、持っていなかったな」
払う気概はあるのに持っていないって、七七ちゃんのツッコミで気が付くって、どういうことなの。
「では頂くとしよう、無償で少し心が痛むが」
別に良いからもらってくれと思いつつ、お皿の上の焼き菓子を綺麗なトングで取って袋の中に入れて渡した。
「ありがたい。これは俺たちの秘密だな、所謂契約だな」
「契約……？七七はAと仲良しだから……契約はいらない……」
「そうか、少し羨ましいな」
何故か少し羨ましがられたけど、訳が分からなくて首がこてんとする。まあいいかと思いながら、店から出ようとする鍾離さんを見送る。
「ふむ、俺も何かを渡さなければ不公平だ。何が良いだろうか……」
ふと何かを思い出して、上着にあったポケットに手を伸ばしてそこから何故か小さな箱を出して渡される。何だろうと思っていたが、「礼だ、喜んでくれると嬉しい」と言いながら去って行った。七七に開けて欲しそうな目で見られたので開ける。
何故か指輪があって目が見開きつつ、気が付くと周りの目線がある。それを感じて、顔が熱くなってきた。
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