テイワットのゆかいななかまたちとのお話 (ページ18)

今日:5 hit、昨日:17 hit、合計:7,150 hit

空ページ18

※王子

空と知り合って、かれこれ経つ。最初は死にかけの時に助けてもらって、それ以来から一緒にいる。
彼はテイワットの外から来た旅人と言い、妹と離れ離れになったらしい。一応旅を共にしているけど、激し過ぎる道のりが続く場合はぎりぎりの所で彼を待つことをしていた。

「そっか、俺の道は……何も意味がなかったんだ」

最後の旅路、そこは険しい道でまた手前で待つことになった。帰って来た彼は疲れた顔をして、わたしに寄り添った。ちょっと驚いてしまったけど、ただ疲れたのかなと思った。

「……何でもない」

その日から一緒にまた彼の家族探しの旅を再開しているけど、そっけない返事が多くなった。いつもぼうっとしており、旅路の中の勇ましくモンスターを薙ぎ払う姿や料理を難なくこなす家庭的な一面とかがあるっちゃあるけど、どこか覇気が無い。
共に過ごす中、夜に抜け出すことが増えた。気になって後を追った。

「王子様、ご機嫌麗しゅう」
「そう」
「王子様、今日はどうなさいましたか」
「別に何も無い」

なんとアビスの魔物たちと相対していた。全く敵対していない様子に呆然としていると、ぺきっと足元に音が響いた。おそるおそる下に顔を向けると、枝を踏み込む足が見えた。いつもは大したことない音でも、それは静かな夜で隠密している身としては致命的だ。

「そこにいるんだろう、A。出て来ても良いよ」

言われた通りに、茂みから姿を現す。「大丈夫、彼女は俺の友達で連れだから」と言いながら、アビスの魔物たちを制していた。すると魔物たちは武器を下ろして臨戦体制を崩した。そして彼の目配せにより、その魔物たちは姿を消した。

「バレたか……俺はアビス教団のメンバーになったんだ」

まさかの言葉に驚いていると、彼は言葉を続ける。

「最後の地へ足を踏み入れた後、そこから。俺たちが今足を踏み込んでいるこの場所に、何も見出せなくなってさ」

普通に何事もないかのように、いつも通りに話す彼。それでも見開かれた眼は、あの時の活気溢れたものではなくとても暗くどんよりしている。

「隠しててゴメン。Aに嫌われるんじゃないかって考えたら、伝えることが出来なくてさ……」

顔を伏せたと思ったら、わたしの両手を丁寧に取り上げて包んできた。

「それでも、Aは俺について来てくれるよね？」

ぎゅうっと強く握られて、間近に見える暗い眼。知らない一面を知り、わたしは彼の何も知らなかったんだと思い知らされた。