ティナリとセノ ページ14
いつしか、わたしはレンジャー長のティナリさんが好きになっていた。薬を作る姿や人や自然に柔らかく接する態度、弟子の少女を指南している所。全てが好きになっていた。かと言ってわたしは、レンジャーたちに差し入れをするだけで接点はあまりない。
「セノが好き……？」
頷いて嘘をついて、ムリに彼と関わろうとする。これしかない、少しでも長くいる為。セノさんとは少し話したことがある程度で認識はあまりないが、話してて楽しかった人だ。
「分かった、交流できるようになるべくセッティングしてあげるよ」
「セノもAが気に入っているから、大丈夫だよ」と続けた。少し硬そうな笑顔で、違和感を覚える。もしかして、忙しい立場同士の人たちだからムリではと邪推する。
「そんなことはないよ、彼の頭の回転の速さは仕事の早さに直結してるからね」
そう言えばそんな逸話があった、教令院の生み出した至高の機械より素早く仕事ができると。そっち方向の化け物かと思ったが、ティナリさんが面白そうに彼を語る姿に少し胸がときめく。ダメ、今は嘘を貼り付けなきゃ。
*
その日から、セノさんと関わる機会が増えた。最初はティナリさんと用事をする為に来ていたが、ここ最近はわたしに関することになってきた。赤い瞳は時折柔らかく笑んだようになったり、ジョークが増えたりした。ジョークは前からあったけど、ここ最近より増えた。
ティナリさんより、彼との交流が増えた。それは複雑だけど、我慢して振る舞っていた。
「A、好きだ。交際を申し込みたい」
あ、そう言えばそんな設定だった、ここで断れば今まで応援してくれたティナリさんを騙すことになる。不自然じゃないように笑って、その提案に乗った。すると嬉しそうにわたしを優しく抱きしめた。
その後は2人でティナリさんに報告しに行った。コレイちゃんにはおめでとうと、もちろんティナリさんにも言われた。胸がチクチクズキズキするけど、我慢して嬉しそうなフリをする。
「また逢いに来る」
彼氏となったセノさんを見送り、1人でぽつんと佇む。これで良かった、よね。
「良かったね、おめでとう」
後ろからティナリさんの声が聞こえた。振り向けない、今のわたしの顔は見せられない。
「友達同士が付き合うって、喜ばしいこと……だよ、ね……」
言葉尻が小さくなっていく彼の声に、元気づけるように声をムダに張り上げて言った。嬉しいって。
でも、笑えて言えてるかな。振り向いて直接言えないや。
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