マット ページ22
今日もあまり良いことが無かった。夕暮れの中でたまたま通りがかったキッチンカーから買った物を、半ばやけ食い気味でばくばく食べた。
「とても多いね、食べきれる?」
結構お腹にずっしりしてきて、お腹を擦る。たくさん買ったことを後悔していると、前から声が聞こえてきた。目線を上げた先には、マットがわたしを覗き込んでいた。きらきらした目で、食べ物とわたしを交互に見る。もう食べきれないし、気持ち悪さが先走って頷いて残りを全て渡した。
「ありがとう!いただきまーす!」
あれだけの量をあっという間にぺろりと平らげた。男性の胃袋はすごいと思っていると、むこうから声をかけられた。
次に、「だって、今日のAっていつもより落ちこんでいるみたい」と言われる。驚いて、自分の顔に咄嗟に両手を這わせる。顔の筋肉がそのような表情を作っていたのかと、恥ずかしくなって顔が熱くなる。
「別に恥ずかしがることはないよ、ボクはそういうところが良いと思ってるもん」
初めて血縁者以外に言われ、今度は別の意味で恥ずかしくなるので止めた。少し不満そうな表情がちらりと見えたけど、口を閉ざした。安堵しながら、言われたことは嬉しかったのでお礼を言い返した。
「うん?そっか、キミもボクにお礼を言いたくなったんだね!こっちこそ!」
何故言われているのか分からない顔をしたけど、いつもの嬉しそうな笑顔を湛えた。自分はあんな感じに笑える自信は無いけど、憧れる表情だ。何をやっても上手くいかないし、最近はあまり良いことはない。彼くらいに吹っ切れたら何もかも良く見えるのかな。
「ボクをそう思ってるの?照れちゃうー!」
嬉しそうに言いながら、目を輝かせている。ポジティブな化身と言えば聞こえは良いくらいに素敵な性格をしている。気が付くと後ろ向きだって言われがちなわたしとは大違いだ。比べるのもおこがましいくらいに。
「そんなこと言っちゃって!ボクはAの良いところ知ってるよ?」
無意識に自分に対する愚痴を言ったら、彼は突然彼自身から見たわたしの長所を列挙し始めた。何とか制したけど、すごく彼と距離が近くなったと後々気付いて顔がさっきよりとても熱くて火が出て来てるんじゃないかと錯覚してしまう程だ。
「毎日見てるから、良いところも悪いところも見えるよ。でも、良いところしか見たことがないよ!」
至近距離でそんなこと言われたら、どんな感情を抱けば良いのか分からなくなるからやめてよ!
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cocoa(プロフ) - 女主でお願いします!百合が好きで(( (6月26日 20時) (レス) id: 59dcdcfe07 (このIDを非表示/違反報告)
さとうみさん(プロフ) - cocoaさん» ご返信ありがとうございます。もう一つお尋ねしたいのですが、夢主は男女どちらでしょうか?女性キャラがお相手ですので、一応までに。 (6月26日 20時) (レス) id: 563e8e19e1 (このIDを非表示/違反報告)
cocoa(プロフ) - ありがとうございます!ELLSWORLDの四人組に歪んだ愛情を向けられるシチュエーションでお願いしたいです。難しいお願いですが何卒宜しくお願い致します。 (6月26日 20時) (レス) id: 59dcdcfe07 (このIDを非表示/違反報告)
さとうみさん(プロフ) - cocoaさん» コメントと感想ありがとうございます。元から女性キャラとのお話は書くのは好きなので、そう仰っていただけると嬉しいです。リクエスト承りますので、シチュエーションとキャラクター名を記載してください。 (6月26日 20時) (レス) id: 563e8e19e1 (このIDを非表示/違反報告)
cocoa(プロフ) - コメント失礼します!さとうみさんの書くELLSWORLDがとても好きで(もちろん他の話も大好きです)もし差し支えなければELLSWORLDのリクエストよろしいでしょうか? (6月26日 19時) (レス) id: 59dcdcfe07 (このIDを非表示/違反報告)
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