EWの短編集 4

トリ(ELLSWORLD) ページ3

※少し閲覧注意



トリと知り合い、数か月が経つ。変わり者と言っても差し支えは無い性格をしている。しがないそんじょそこらのわたしを器用に見つけ、銃をうっとりした様子で眺め、発明家の方面もある。それでも多彩な彼女が羨ましい。
でも今はもっと変で、ベッドに転がるわたしを見下ろす。昨日トリからもらったお菓子を食べた後でかなり眠り、気付いたらこうなった。合鍵は渡してないし、家の場所も教えてない。

「ダメよ、アタシに内緒に何でもかんでもしちゃうなんて……知らない内のケガもイヤだけど、他の輩共に目線を向けられるのが一番イヤ」

彼女に言葉を向けられ、優しい声色とは別に表情が無というギャップに背筋が寒くなる。

「本来アタシに向けられる筈の目線が奪われるのよね？それに、誰かに見られてしまって関係を持ったらイヤじゃない？」

わたしに跨ったまま言葉を続ける。意味が分からなくて言葉を聞くと、顔を近付けた。唇に何か柔らかい物が当たり、生暖かい物が侵入する。わたしの舌を掬って交じり合い、ここで彼女とキスをしていると気付いた。しばらく後で唇を離され、トリの顔のアップが映る。結構綺麗な人なのとさっきのでぼうっとしながら見上げたら、急に腕を伸ばした。
首に回る手の指先が食い込み、力が込められる。内側を圧迫し、空気の通り道を遮断する。頭の血がその場でぐるぐる、酸素が無い、痛い、苦しい、怖い、嫌だ、あ、あ、あ、あ、あ、ア

「アタシ、赤色は好きよ。今のアナタ、とっても赤い顔でステキ……」

首から急に手を離された。急に広がったせいか空気がいっぱい入ってキャパオーバーで咽ながらも、ぼやけた視界がはっきりした。体の急激な変化に悶えると、また手が伸びた。怖くて情けない声を上げてしまい、身を守る為に手を動かす。虚しく体に手が到達し、今回は頬でゆるりと撫でた。

「アタシの毎日の苦悩が分かった？アタシ以外の存在とたくさん触れ合うアナタを他所でね？毎日Aを考えるけど、最終的には息苦しくなっちゃう……想い過ぎも困りものね」

こっちを見下ろす存在は、相変わらず嬉しそうな表情で言葉を続けた。

「Aは無防備だから、家の侵入も食べ物に機械や薬を仕込むのも簡単だったわ。怖いわねえ、アタシがしっかり守ってあげる」

さっきわたしを殺そうとした人なのかと疑いたくなる程、優しい顔と手つきで頭を撫でる。
今までの関係ががらがら崩れる音が聞こえ、やっていく自信が無いと気付くのは早かった。

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