ポールとパトリック ページ16
星空へと手を伸ばす小さな横たわる影。その動作をするのは、軍服を身に纏った女性のAだった。先程までの小さな相手軍隊に、場所が遠いことも相まって一人で応戦することになった。それが長引き、ようやく最後の一人を片付けた頃には夕闇空になった。しかし、彼女も相当な深手の数々の傷を体中に浴びた。
顔にまでケガが及ぶ程に酷く、流れた血は地面に浸み込む。その重症で生きているのが不思議だ。やや細い目は、何を視界として映しているかは分からない程に今にも閉ざされそうだ。
「ちょ、ちょっと、もうそれ以上にムダに体力を使わないで……」
「生きてたか、本筋が来るまでの応急処置しかできねえが持ち堪えろよ」
瀕死のAに近付くのは、同じデザインの軍服の男2人。
上半身を軽く優しく起こすのはパトリック、重症な所から手当てを施すのはポールと連携が見えている。彼女は虚ろな眼をゆっくり開け、パトリックの腕の中で安堵に似た表情を浮かべている。ポールもそれは作業の合間で見えたようだ。
「安らかな顔してるが、あの世が見えるか?」
「は?もう死ぬみたいな顔をしてるけど、そんなことさせないよ?」
「絶対死なせないぜ。何よりリーダーがうるさい、オレたちもお前さんが目の前で息絶えたら後味悪いって話じゃないからな」
普段は温厚な口調のパトリックがやや荒々しい口調で、Aに言葉をかけている。彼女は表情をあまり変えず、穏やかなままで彼等の言葉を受けた。パトリックに至っては、傷が小さい上に少なく頭を優しく撫でたり、応急手当が及んでいない流血する傷口を手で優しく負担にならない程度に覆ってこれ以上の失血を防いだり、口調と相反する様子が見える。
「手を退けてくれ、手当てできん」
「任せた、ちゃんとして」
「分かってる、オレも仲間が死ぬのは見たかない……よりによって、瀕死のAとはなあ……」
彼が既に手当した場所は、真新しい包帯ながらも少しずつ赤黒い染みを作っていた。最後の箇所に手当てをし、食べ易く日持ちがする携帯食を仕上げという状態で口に優しく入れ込んだ。目を完全に閉ざした様子を見たパトリックは、一瞬焦った表情をしたが伝わる心の臓の音に安堵した表情を見せた。
「寝ただけ、か……良かった……」
「本当に彼女が好きだな」
彼女を優しく抱きかかえるパトリックを眺めたポールは、2人の傍に近寄る。彼等は近寄って来る応援部隊に足を進める。星々に見つめられ、彼等はあるべき場所へと帰った。
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cocoa(プロフ) - 女主でお願いします!百合が好きで(( (6月26日 20時) (レス) id: 59dcdcfe07 (このIDを非表示/違反報告)
さとうみさん(プロフ) - cocoaさん» ご返信ありがとうございます。もう一つお尋ねしたいのですが、夢主は男女どちらでしょうか?女性キャラがお相手ですので、一応までに。 (6月26日 20時) (レス) id: 563e8e19e1 (このIDを非表示/違反報告)
cocoa(プロフ) - ありがとうございます!ELLSWORLDの四人組に歪んだ愛情を向けられるシチュエーションでお願いしたいです。難しいお願いですが何卒宜しくお願い致します。 (6月26日 20時) (レス) id: 59dcdcfe07 (このIDを非表示/違反報告)
さとうみさん(プロフ) - cocoaさん» コメントと感想ありがとうございます。元から女性キャラとのお話は書くのは好きなので、そう仰っていただけると嬉しいです。リクエスト承りますので、シチュエーションとキャラクター名を記載してください。 (6月26日 20時) (レス) id: 563e8e19e1 (このIDを非表示/違反報告)
cocoa(プロフ) - コメント失礼します!さとうみさんの書くELLSWORLDがとても好きで(もちろん他の話も大好きです)もし差し支えなければELLSWORLDのリクエストよろしいでしょうか? (6月26日 19時) (レス) id: 59dcdcfe07 (このIDを非表示/違反報告)
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