花びら散りしアングレカム ページ10
朝起きると、トードがいなかった。彼が着てたパジャマが丁寧に畳まれ、ベッドの脇のテーブルの上にあった。
アラームをセットしたのに、何故か勝手に切れていた。それよりも時計を見ると、午後になりそうだ。こんなにぐっすり眠っていたとは思わなかったが、もう恋人がこの町から出て行ったのは明白だ。携帯電話に彼に対してメールを送った後、着替え中にインターフォンが鳴った。大急ぎで服を着て、扉を開ける。
「よう、恋人について行かなかったんだな……こっちとしては、どっちでも良いが」
さっき起きたばかりと言うと、開けた扉の先にいるトムの目は一瞬だけ白くなった。今度は呆れたような声色で言った。
「アンタらって薄情だな。そっちはお熱じゃなかったみたいだが、アイツはどういう風の吹き回しだ」
わたしは薄情、それは間違いない。それでもむこうは別れたいと言ってないので、この関係は長距離になっても続ける気だ。もしかしたら、恋しい気持ちが生まれるかもしれないし。それ以前に、恋人への想いの募らせ方に至っては淡い期待にかけるしかできないものなのかと我ながらに疑問に思う。
「ままごとみたいな恋愛関係じゃないか……」
何だかしっくりくる例え方で、腑に落ちている。それに頷くと、また呆れられた表情を向けられた。
自分自身を人形と見立て動いた感覚もあり、看破されたみたいで苦笑しか零れなかった。
「長距離って上手くいくもんか？元から恋しくない相手を、どう恋しがる気だよ」
言われて胸にぐさりと突き刺さった。さっき、自分でもそんなことを言い聞かせるように何度も思っていたから。エスパーか何かかとしか思えなかった。
「イヤなら今の内にフっとけ、お互いに傷も浅いだろ」
多分、いつか、きっと、好きになれるから、そんなこと言わないで。これ以上言われると揺らぎそうで、トムを追い出した。何とかできたけど、その間もじいっと目玉の無いくぼみを向けられて変な気分で気持ちがずっと落ち着かなかった。
約束したんだ、トードとはお互いに好きになる前提で付き合うって。どうして今更そんなこと言うの。言葉と目線が記憶にこべりついて、頭の中がぐるぐるしている。落ち着ける為に冷蔵庫を荒々しく開け、コップに冷やした容器の飲み物を注いで一気に飲み干した。それでも心臓の動きは、不定期で不細工で相当気持ち悪かった。
「俺の気も知りもしないでよ……本当に見せ付けだけなら、アイツもAも相当質の悪い存在じゃねえか……」
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さとうみさん(プロフ) - ふくさん» コメントと感想ありがとうございます。どっちも倫理的に若干おかしな風に仕上げました。元から2人分のオチたお話を書こうと思っていたので、そう仰っていただけて嬉しい所存です。 (2023年4月22日 14時) (
レス) @page30 id: aad9d9a6a0 (このIDを非表示/違反報告)
ふく(プロフ) - はじめまして！完結おめでとうございます！とても素敵な小説でした！私はトードくん推しなのでifストーリーがあるのはとても嬉しかったです！ (2023年4月22日 13時) (レス) @page29 id: 7394bcafd8 (このIDを非表示/違反報告)
さとうみさん(プロフ) - 狂人(?)◆うごメモ民さん» コメントと感想ありがとうございます。今回はほのぼの回なので、比較的穏やかに仕上げました。神作だなんてとんでもない、わたくしの作品は自己満足の塊なので。後半につれて内容が少し人を選んできますので、注意しつつお付き合いいただけたら幸いです。 (2023年4月8日 18時) (レス) id: aad9d9a6a0 (このIDを非表示/違反報告)
狂人(?)◆うごメモ民(プロフ) - 今回も神作をありがとうございます!!お酒に酔ったTomが可愛すぎて尊死しそうです...w (2023年4月8日 16時) (レス) @page18 id: c323c8e8f0 (このIDを非表示/違反報告)
さとうみさん(プロフ) - 熊井さん» コメントありがとうございます。熊井さんのお暇で気が向いた時に見ていただきたいので、全然気にしてないです！こちらも今だけ暇で、忙しくなったら書けなさそうでして……今回は犬猿の仲の2人をメインで、内容は人を選びますがお付き合いくださると幸いです。 (2023年3月21日 23時) (レス) id: aad9d9a6a0 (このIDを非表示/違反報告)
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