カトレアに囚われた小さな存在たちへ ページ15
トードの部屋に、トムと一緒に入る。トラップ屋敷という言葉を思い出し、トムとの小さい冒険と化したそこそこの部屋をきょろきょろ見渡す。彼女なのに、彼氏の部屋に入るのは今日が初めてと言うちょっと変なシチュエーションだ。
「確かこれか、他人の物を勝手に開ける趣味は無いから中身は知らん。アイツはアンタに甘かったから、危害を加えることはする気は無いだろうし」
トムから今度は小さな箱を貰った。先日の大きな箱と比べるとかなり小さい。あれはぬいぐるみセットだったからしょうがないけど。箱のメッセージカードにはまたわたしの名前が書かれているから、それは間違いないと分かる。
さっそく開けると、中から赤色のアクセサリーが目立つチョーカーが出て来た。一瞬意味が分からなくてじいっと見ていたが、我に返ったので今度はおそるおそる聞いてみる。これで最後のプレゼントかと思うしかない。
「多分それで最後じゃねえか？大分掃除したが、毎回命がけだったぜ」
遠い目の青年を眺めながらそうかなと思いながら、チョーカーを首に巻く。こんなの初めてだし鏡も無いし、綺麗に巻けるとは思わなかった。それでも何故か付けていた。
「アンタ、付けたことないだろ。ほら、来いよ。付け直してやるから」
案の定な反応をされて、何故かちょいちょいと手招きをされた。無意識にふらりと近寄り、首の後ろを見せるようにそこそこ近くに立った。間もなく何かが触れる感触がして、他の人肌の僅かな面積の温度とこそばゆい感覚に声を上げそうになったので口を必死に押さえていた。顔も無意識に熱くなってきて、視界がぐるぐるしてきた。
「何でいちいちびくびく体を跳ねさせてんだ……こっちも集中できん」
謝罪を言おうとしたけど、口から変な声も出ていたので変な感じに謝っていた。むこうはそれ以上何も言わなくなって、さっきより素早い手つきでしてくれた。むこうが終わったと言ってくれたので、彼からよたよたした足取りで離れた。さっきむだに神経を使い過ぎて、ちょっと疲れてしまった。
「鏡でも見て来い、後は自分で調節でもしとけ……」
彼も少し疲れたような声色と表情だから、多分わたしと同じ気分なのかと察した。部屋の外に出て、マットから鏡を借りて見てみた。
「カワイイねー！趣味がイイね！前から思ってたけど、ホントーにキレイだよ！」
マットに声をかけられたけど、はにかむしかできなかった。さっきを思い出して、トードとは違ったもので落ち着けなかった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 14人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
さとうみさん(プロフ) - ふくさん» コメントと感想ありがとうございます。どっちも倫理的に若干おかしな風に仕上げました。元から2人分のオチたお話を書こうと思っていたので、そう仰っていただけて嬉しい所存です。 (2023年4月22日 14時) (
レス) @page30 id: aad9d9a6a0 (このIDを非表示/違反報告)
ふく(プロフ) - はじめまして！完結おめでとうございます！とても素敵な小説でした！私はトードくん推しなのでifストーリーがあるのはとても嬉しかったです！ (2023年4月22日 13時) (レス) @page29 id: 7394bcafd8 (このIDを非表示/違反報告)
さとうみさん(プロフ) - 狂人(?)◆うごメモ民さん» コメントと感想ありがとうございます。今回はほのぼの回なので、比較的穏やかに仕上げました。神作だなんてとんでもない、わたくしの作品は自己満足の塊なので。後半につれて内容が少し人を選んできますので、注意しつつお付き合いいただけたら幸いです。 (2023年4月8日 18時) (レス) id: aad9d9a6a0 (このIDを非表示/違反報告)
狂人(?)◆うごメモ民(プロフ) - 今回も神作をありがとうございます!!お酒に酔ったTomが可愛すぎて尊死しそうです...w (2023年4月8日 16時) (レス) @page18 id: c323c8e8f0 (このIDを非表示/違反報告)
さとうみさん(プロフ) - 熊井さん» コメントありがとうございます。熊井さんのお暇で気が向いた時に見ていただきたいので、全然気にしてないです！こちらも今だけ暇で、忙しくなったら書けなさそうでして……今回は犬猿の仲の2人をメインで、内容は人を選びますがお付き合いくださると幸いです。 (2023年3月21日 23時) (レス) id: aad9d9a6a0 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
