真横のアジサイが香り立つ日 ページ14
スーパーで買いこみをしてると、前から緑色と青色の人がやって来た。知り合いだからと挨拶すると、彼らはわたしに気付いて挨拶をしてくれた。
「Aって、一気に買い込みしてる感じ？」
「そう言えば、アイツが言ってたな」
「Aとの繋がりって、ぶっちゃけるとトードだけだったから。後は少しトムくらいかな……知り合いなのに、変な話だけどさ」
そう言えば、エッドとマットとあまり関わったことがない。顔見知り程度で、それ以上でもそれ以下でもない。わたし自身、外交的と言えない性格だしインドア派で尚更かもしれない。
「そうだ、トードの部屋の掃除をしたら君宛ての物をまた見付けたらしくって。来てくれない？」
「何で俺にアイツの部屋の掃除を丸投げするんだよ、毎度危なっかしいモンを発掘している気分だぞ？」
「何が出てくるか分かんないし、トラップ屋敷を歩いている感覚でイヤだ」
「俺も毛嫌いするヤツの部屋だからイヤに決まってんだろ！友人を生贄にするな！」
彼らのやり取りを眺めると、微笑ましくて思わず笑ってしまった。自分でもようやく気付いて、顔を少し反らしながら謝ると彼らは目を見合わせた。周りの喧騒から外れたようなしばしの妙な中で口を開いたのは、緑色の存在だった。
「……わあ、トードの気持ちが分かる気がする……って、君はどういう顔で僕を見てるんだよ」
エッドは少しはにかんでいたが、無言で自身を睨む友人を見て声をかけていた。その表情の変化のタイミングは、前者の言葉を言い終わったくらいだ。
「じゃ、じゃあ、家にマットがいるから、先に行くなり後から来てよ。じゃあねー」
ちょっとした嫌な気配を感じた顔のエッドは、トムを半ば強引に連れて行った。あっという間に眼前からいなくなった。
さっき変な感じがしたけど、別に良いかと買い物を再開した。さっさと買い物を済ませ、家に一旦帰って荷物を置いて大急ぎで彼らの家まで来た。恋人が前に住んでいた家で、その気配がない。それなのに、落ち着いている自分はどういうことか。先日の電話より穏やかな気分だ。
「何してんだよ、とっとと入れば良いじゃねえか」
後ろからトムの声が聞こえた。少し面倒そうにわたしを見ていて、その表情にちょっと怯んだ。でも1人で入るのは何だか心細かったから、一緒に入って欲しいと頼んだ。
「お、おう、良いぜ……さ、さてと、入るか」
少し照れ臭そうながらも、一緒の道を数歩歩んだ。少しずつ穏やかな心境でいる自分が変に見えた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 14人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
さとうみさん(プロフ) - ふくさん» コメントと感想ありがとうございます。どっちも倫理的に若干おかしな風に仕上げました。元から2人分のオチたお話を書こうと思っていたので、そう仰っていただけて嬉しい所存です。 (2023年4月22日 14時) (
レス) @page30 id: aad9d9a6a0 (このIDを非表示/違反報告)
ふく(プロフ) - はじめまして！完結おめでとうございます！とても素敵な小説でした！私はトードくん推しなのでifストーリーがあるのはとても嬉しかったです！ (2023年4月22日 13時) (レス) @page29 id: 7394bcafd8 (このIDを非表示/違反報告)
さとうみさん(プロフ) - 狂人(?)◆うごメモ民さん» コメントと感想ありがとうございます。今回はほのぼの回なので、比較的穏やかに仕上げました。神作だなんてとんでもない、わたくしの作品は自己満足の塊なので。後半につれて内容が少し人を選んできますので、注意しつつお付き合いいただけたら幸いです。 (2023年4月8日 18時) (レス) id: aad9d9a6a0 (このIDを非表示/違反報告)
狂人(?)◆うごメモ民(プロフ) - 今回も神作をありがとうございます!!お酒に酔ったTomが可愛すぎて尊死しそうです...w (2023年4月8日 16時) (レス) @page18 id: c323c8e8f0 (このIDを非表示/違反報告)
さとうみさん(プロフ) - 熊井さん» コメントありがとうございます。熊井さんのお暇で気が向いた時に見ていただきたいので、全然気にしてないです！こちらも今だけ暇で、忙しくなったら書けなさそうでして……今回は犬猿の仲の2人をメインで、内容は人を選びますがお付き合いくださると幸いです。 (2023年3月21日 23時) (レス) id: aad9d9a6a0 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
