さあ、お手を拝借

きぶんはかわるもの ページ6

しばらく外で遠くの物を記憶しながら体を落ちつけていると、視線を感じた。そっちをむくと、仮面のひとことガングルがわたしたちを見ていた。

「あ、ガングル。あなたも気になって見に来たの？」
「え……あ……さっき、近くで見れなかったから……改めて、初めまして。さっきのひとたちの中で、私なんて印象薄くて……覚えてくれているかしら……？」

もちろんだとうなずいて、彼女の真っ赤なリボンの手をそっとにぎり返してみた。小さく伝うふるえる手で、大丈夫かなと思いながらそっと手を離していた。

「ケインの連れて来たコだから気になったけど、普通にクセの無いのね……仲良くできそう……貴女が良ければ、こんな私と仲良くしてくれないかしら……？」

またうなずくと、彼女はめそめそした仮面でもどこかうれしそうにしてわたしを見た。そう言っても、まだ交流していないひとたちがいる。ズーブルとかジャックスとかキンガーとか。でも、ケインはキンガーにすごく怒っていたから大丈夫なのかな。

「ズーブルくらいかな、ちゃんとお話できる相手って……ジャックスもキンガー程じゃないけど……イタズラを仕掛けられるかも……」
「そうかも……ノーレには結構難しい話相手とイタズラ好きか……うん、ムリして関わることはないわ」

ふたりとも、あまりいいイメージがないらしい。関わらないとどういうひとか知れないのはそうだけど、キンガーのどこを見ているのか分からない目はちょっとこわかったな。ジャックスはズーブルには意見がかち合いたくないって言われてた。そう思うと、ちょっとアレな性格なのかな。あれ、こわくなってきちゃった。わたし、ここで勉強しても大丈夫なのかな。頭と体が壊れないかな。

「も、もし辛くなったら言ってね……？出来るだけ力になってあげるから……！でも、言ってから何だけど、あんまり期待しすぎないでね……」
「うん、手を貸してあげるね……うん、本当にこんな私で良ければ……」

相かわらずガングルはちょっと後ろむきなことを言っているけど、それでも何だかんだで手をさしだそうとしてくれている。嬉しいので、彼女の気持ちをしっかりうけ取ろうとうなずく。

「良かったわね、ガングル」
「……ああ、久し振りにこんな気持ちになったわ……良いのかしら……？」

どういう気持ちか分からないけど、ふにゃふにゃした声でも少し明るくはずんでいるようで。嬉しいのかな、それなら良いんじゃないのかな。わたしも好きな気持ちだから。

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