いっぽをふむ ページ2
ふらふらの足で何とか歩いてみる。とても久し振りな感覚っぽくて、ちょっとおぼつかない。歩こうとすると、体も大きくゆれてこわい。
「大丈夫ですか?」
ケインにそう心配された。だいじょうぶ、わたしは平気。ただ、不安定な歩き方しかできないだけ。
「それが心配なのですが……ノーレさん、いつでも助けるので仰ってくださいね?」
あ、歩けるもん、ちゃんと歩けるもん。ただ、ちょっと思い出せなかっただけだもん。
それに歩く話は、浮いているひとに言われたくない。
「ちょっと身に纏っているスキンも大きかったでしょうか……でも、可愛さも両立させるとしたらこれが一番良いかと思ったのです」
今わたしが体に身に纏わせている物のことか、確かにだぼだぼの服と袖もだぼだぼで地面にずり落ちるくらいに長い白衣で歩きにくいって思ったけど。まさかこれって、ケインの趣味なの。
「言わせちゃいます?聞きたいですか?」
聞いたら、わたしに大ダメージがいくタイプの話だ。意味ありげにこっち見てるし、少しもじもじとわざとらしくしている。断ると、少しつまらなさそうに目を少しだけ伏せた。
「……分かりました、これは別の機会にお話しましょう!楽しみは取っておくべきです!」
何を言ってるんだ。何が楽しみなんだ、理解できない話になってしまうのではないか。このひとと関わると、うさんくさいって気持ちが先にくる。どんな気持ちよりもくるから、変なひとかもしれない。
でも、あの時の言葉すらまともにしゃべれなかったわたしが、このひとに頼らないとダメだって思ったから手を取ってもらった。それで、今こうしてこのひととここにいるんだ。
「どうしました?私を熱心に見詰めて―――はっ!まさか、私の魅力に気付かれたのですか!」
魅力もなにも、あなたのことは知らない。だから、そんなことはならない。見た目は入れ歯と奥にあるオッドアイ、下に伸びるタキシードの体。
うん、すごいかっこう。作った人の顔が見たい。
「作った人ですか?ああ……すごく頑張り屋でどれだけ周りにああだこうだと心無いことを言われてもへこたれない、逆境の中でもそんな精神が素晴らしくて素敵で可憐な方ですよ」
嬉しそうにわたしを見ながら語る姿は、彼自身がとても強く尊敬している人なんだなって分かる。そうなんだ、知らなかった。よく知らないことばかりだから、ちょっと恥ずかしいな。
「これからいっぱい私と学んでいきましょう?」
そうだね、それが良いや。
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さとうみさん(プロフ) - エヌアさん» はい、彼は基本的に温厚ですからね。誰でもそうなので、多分特別なベルダースなキャンディはくれないと思います、多分。今作もとある曲たちを異色混合させまくったので原型があんまりないです。はい。進んで行ったら片鱗はあるかもですね。 (1月10日 18時) (レス) id: 563e8e19e1 (このIDを非表示/違反報告)
エヌア - 新作読みました!優しいですね…(泣)ケインってもう凄い!不気味がまたいいって物もあります! (1月10日 8時) (レス) @page8 id: 0bd8eb1c3e (このIDを非表示/違反報告)
さとうみさん(プロフ) - エヌアさん» ありがとうございます、今回は全方向な彼を魅せれたらなと思います!不気味が強くなると思いますけど(笑) (1月9日 20時) (レス) id: 563e8e19e1 (このIDを非表示/違反報告)
エヌア - 最近、目が悪かったので目の保証になるぐらいいい文章でした! (1月9日 13時) (レス) id: 0bd8eb1c3e (このIDを非表示/違反報告)
エヌア - ケインがメインなんですね!もう、なんと言ったらいいか分かんないぐらい嬉しいです!こんないい作品を作ってくださりありがとうございます! (1月9日 13時) (レス) @page7 id: 0bd8eb1c3e (このIDを非表示/違反報告)
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