ありがとうを伝えたい。[峯](1) ページ4
※連載設定
※ネタバレ?あり
※過去回想
初めての高校。
久方ぶりの学校。
「転校生」としての私。
先生の紹介と共に開かれるドアに、より呼吸が荒くなる。
どうしようどうしようと、考えが追いつかない。
恐怖に囚われた私は、震えが止まらなかった。
また目を付けられるのかな。
いじめられるのかな。
考える事ひとつひとつが怖くて、私が脳裏に浮かべる「学校生活」というものはとても暗くおぞましい物であり、中学の頃がフラッシュバックされる。
でも、自分で選んだ道だ。
おじさんも協力してくれた。
はじめがうまくいきさえすれば、大丈夫。
呼吸を整え、覚悟を決めた私は、教室へと一歩足を踏み入れた。
「こいつが新しく入る生徒だ。・・ほらA、挨拶しろ」
「あっ、あの、その、A、です・・。」
勢い良く頭を下げ、様子を伺うと、「顔、あげていいぞ」と低くて優しい声がかかる。
「俺はお前の担任になる桐生一馬だ。そう固くならなくてもいいぜ?・・よろしくな。」
そう言われ、優しく頭を撫でられた。
それでも、まだ「先生」を信用しきれずにいる私がいた。
「じゃあ、早速教室に向かうか。」
「あ、は、はい!」
「じゃあ、後でな。A、頑張れよ。」
そう言いおじさんは去っていった。
一気に心が悲しくなり、不安が押し寄せる。
先生に遅れないように、でもとぼとぼと廊下を歩いていたら先生は察したのか、人気のない所で立ち止まり、私に声をかけた。
「・・伊達さんから事情は聞いた。」
「・・・おじさんから?」
「あぁ。・・・今まで、大変だったな。」
「・・・・・・・。」
「だが、俺のクラスは皆いい奴ばっかだ。そんなに警戒しなくとも、大丈夫だ。」
まだ、まだ、その言葉を信用しきれない自分が悔しかった。
「・・まぁ、今のお前の状況で言っても信用しきれないだろうな。」
「・・・すみません。」
「気にするな。・・それに、今のお前を全て受け止めてくれる存在は、他に居るからな。」
「え・・?」
「まぁ、教室に入ってからのお楽しみだ。」
先生の言葉が、今は理解できなかった。
そして教室の前へと着いてしまった。
−続け−
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作者名:顕微鏡 | 作成日時:2016年8月14日 0時