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「最近Aさん綺麗になったよねー」
『…え、どうしました？』
お昼休憩中、例の如く佐々木さんと食堂でご飯を食べていると言われた一言。はて、何も変わったようなことはなかったはずだけど。
「さては！彼氏ができたなー！」
『あ、はい』
「え、そうなの？！」
『え、確信があって言ったのでは…』
流石に出会いのきっかけをくれた先輩に言わないのも失礼かと思い、いつかの飲み会で一緒だった彼であるとお伝えすれば、それはそれは歓喜していた。他人の事を自分の事のように喜べる先輩の心の広さたるや。そういうところも可愛いのだけど。
「そっかそっかー。でもAさんに心の拠り所が出来たのはいいことだよね」
『心の拠り所、ですか』
「だって単身愛知に越してきてさ、周りは知らない人だらけ、職場の人間はどうしたって職場の人間だし、なかなか腹割って話せるっていうの？そういう人いないじゃない？」
元々人によって接し方を分けているわけでもなく、誰に対しても同じように対応していたのは全員を線引きしてこちら側に近づかないようにしているからだと気付いたのは随分昔だ。要は広く浅く、元より素直に心の中を吐露するようなことは出来ない性格であるが故にそう生きる事が楽だった。恋人というのも勿論他人であるしある程度の線引きは必要だと思っているけれど、それが心の拠り所と思えるまで信頼出来るようになるまでどれ程の時間を要するのか。
「お待たせ、ごめんね遅くなって」
『ううん、今出てきたとこだし大丈夫だよ。りょうくんもお疲れ様』
「あ、これ使ってくれてるんだね」
仕事終わりに職場近くで待っていると目の前に止まる車、助手席に乗り込めばいつものキラキラした笑顔で迎えられる。ホントこの人は疲れと無縁なんじゃないかっていうくらいタフだしとことん顔に出ない。
『うん、お気に入りなの。私青色好きだし』
「そうなんだ、嬉しいなぁ」
『…りょうくんの色だもんね、』
揺れるガラス玉に手を伸ばす彼にそう言えば、益々嬉しそうな顔をしてくれる。それを見るだけで私の心が温かくなる。それだけで勿論幸せなのだけど、いつしか時を重ねていってこうしてお互いの手の届く場所が心の拠り所なのだと胸を張って言えるようになればと彼を見つめながら願った。
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夜宵(プロフ) - 蒼姫さんの作品を遡って読んでいたらこの作品にたどり着きました。いい意味でオチが全然見えなくて、ハラハラしながら読み切ってしまいました。蒼姫さんのペースで構いませんので、完結まで楽しみにしています。 (2020年5月8日 19時) (
レス) id: af02700ee8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：蒼姫 | 作成日時：2019年8月22日 13時
