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「珍しいやん、ゆめまるから誘ってくれるのなんて」
「それが、てつやも来たがってたんだけど編集終わらなきゃ家から出してもらえんて虫さんに」
「そういうお前も1ヶ月近く動画溜めとるげ」
ゆめまるに偶には飲みに行こうと誘われ、特に予定もなかった為二つ返事で了承した。予約された個室の居酒屋は行き慣れた店で、適当に酒とツマミを頼むとゆめまるが落ち着きなく自身の指を弄る。そこでおおよそ言われるであろう事の察しがついた。
「…無理に傷付けんように言葉選ばなくたっていいがや。俺もここまで来て嘘つこうなんて思わん」
「としみつってデリカシーないくせにそういうところは勘が働くから嫌だよ」
「デリカシーないは余計だら！」
重い空気にしない為か、息を吐くように笑ってグラスを持ち上げるゆめまるに倣ってジョッキに手を掛ける。小気味いい音がするジョッキの中でビールの泡が揺れる。ただ何と無くそれをじっと見つめてしまう俺の頭は、やっぱり彼女の事でいっぱいだった。
「あいつがさ、熱出した時見舞いに行ったことがあるんだよ。女の家に長居するのも悪いし、帰ろうと思ったところで引き止められたんだら。それで気持ちが抑えられなくなって、でもどうしたらいいかわからんくて、上手く連絡が返せんくなった」
「…」
「それでも、少しは俺に気があるんじゃないかなんて自惚れて…誕生日の時だって、本当は渡したかったプレゼントも渡せなかった」
「えっ、みんなで買いに行ったやん」
「個人的にも用意してたんよ。でも、りょうもそうだって知って、怖気付いちまって…」
お膳立てするようにあの場に2人を残したことを、後から死ぬほど後悔した。きっとそんな都合のいい可能性なんてないのだろうけど、あの場に残ったのが俺とAだったなら、未来は変わっていたのかもしれないなんて考えてしまうくらいには。
「悪かったな、気ぃ遣わせて。ちゃんと気持ちの整理はつけるつもりだからさ」
「としみつ…」
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夜宵(プロフ) - 蒼姫さんの作品を遡って読んでいたらこの作品にたどり着きました。いい意味でオチが全然見えなくて、ハラハラしながら読み切ってしまいました。蒼姫さんのペースで構いませんので、完結まで楽しみにしています。 (2020年5月8日 19時) (
レス) id: af02700ee8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：蒼姫 | 作成日時：2019年8月22日 13時
