夢で逢いましょう。 (ページ9)

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『やばい、天気予報曇りだったから油断しとった…』

営業終わりに取引先の会社を出れば横殴りの雨、酷いところは電車が遅延するレベルらしく時間も時間だったためか上司から直帰の許可が下りた。明日はちょうど週末でお休みだしラッキーとは思ったけれど生憎傘は持っていないし最寄りまでも少し歩かなければいけない。直帰だし仕方ないと腹を括って外に飛び出せば季節外れの雨がすぐに体温を奪っていった。

『…くしゅん！あとちょっとだぁ…』

どうにか交通機関を乗り継いで自宅最寄駅まで辿り着いた。肌に張り付いたシャツが気持ち悪いし手持ちのハンカチでは到底追いつかないレベルで濡れ鼠になってしまった。ここまでくるとコンビニで傘を買うことも億劫で、かといってタクシーに乗ったら迷惑かもしれないと思うと歩いて帰ろうかとさえ考えた。

「ちょっと、何してんのお姉さん」

『わ！ざわくん！』

ぽんっと頭に何か乗ったと思い振り返ると怪訝そうな顔をしたざわくんがいて、平日なのに顔が見られたことに少し嬉しくなる。事情を説明するとまた怖い顔をしてそのまま手を引かれるから、なんだか触れちゃいけない気がして黙って後をついていった。

「乗って」

『え、これざわくんの？ダメだよ、シート濡らしちゃうから』

「いいから、乗って。送ってく」

有無を言わさないその口調に、それ以上意地を張ることは辞めて大人しく助手席にお邪魔した。住所を伝えてナビを設定すると、それ以上運転席は見れなかった。怒った様子の彼が怖くてっていうのもあるけれど、何より不意のこの状況にドキドキしてしまって顔が赤いのをバレたくなかったから。

「着いたよ」

『あ、ありがとう…』

「…ねぇ、僕これからオフなんだよね」

『？う、うん…』

「お礼にお茶くらい貰ってもいいかなって」

『えっ、あ、うん。ごめんね気が付かなくて…じゃあ、上がってく？』

「うん、部屋番号だけ教えて。車停めてくるから」