向日葵 ページ44
Shibayu×同級生
『…柴田くん?』
「えっ…」
『やっぱり!柴田くんだ。久しぶりやね?』
友人の結婚式。チャペルから披露宴会場に移動する途中声をかけてきた女性は、モスグリーンのワンピースに控えめの化粧をした肌の白い綺麗な人。
"その木、なんて名前なんですか?"
学生時代から変わらない、綺麗な声で尋ねる彼女は俺の高校の同級生だ。
「Aちゃん…だよね?」
『そう!覚えててくれたんだ、嬉しい』
ふんわり笑うところも学生時代のそれと何ら変わらない。ただ、纏っている雰囲気はいくらか大人っぽくなった気がする。当時から大人びていたからそう大差ないけれど、格好も手伝ってか随分と自分が子供のように感じてしまって恥ずかしい。彼女の目に映る自分はどんな風に変わっただろうかと考える。
「忘れんよ、衝撃的な出会いだったからね」
『ふふっ、確かに。しかもあれ、柴田くん生物部じゃなかったんだら?正式には。後から聞いてびっくりしたんだげ』
寒空の下、中庭の木の前でそれらしいことをしている俺に話しかけてきた彼女に、俺はなんて返したのか今では覚えていない。それからも時々部活の時間に声を掛けられては、植物の話をしたりそれ以外の話をしたりして時間を過ごすことがあった。クラス自体一緒になったことはなくて、そんな放課後の些細な時間しか彼女を知ることは出来なかったけど、高校を卒業してからも暫く忘れることのできなかった俺の初恋でもあるわけで。
『こんな所で再会できると思わんかった。動画ではね、時々見てるんよ。頑張ってるなぁと思ってね』
「いや、なんか…同級生に見られると恥ずかしいなぁ、」
『めちゃくちゃ体張っとるげ、柴田くんらしいと思って。いつも笑わせて貰ってます、子供と一緒に』
「えっ」
"子供"というワードで初めて気付いた、彼女の左手の薬指にも銀色に光るそれがあること。この歳にもなれば周りは大抵結婚してる奴らが多くなってきたし、子供がいる奴もちらほらいる。何もおかしいことではないんだけれども。
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作者名:蒼姫 | 作成日時:2019年10月19日 15時