感情 ページ5
Toshimitsu×同棲彼女
『あ、としみつ。おかえり』
「おん、ただいまー」
重たい体を引きずって玄関で靴を脱ぎ、リビングへ通るとエプロン姿で迎えてくれるA。こうして同じ家に帰ってくることは初めてではないはずなのに、疲れた体に彼女の発するおかえりがなんだか沁みて、柄にもなく後ろから抱き締める。
『ふふっ…疲れたでしょ、すぐご飯に出来るけど先にお風呂入ってくる?』
「んー…飯がいい」
『はいはい、じゃあ手洗ってきてね』
きゅっと手先を握られて、離れた体に寂しさを覚えると頬に唇を寄せられる。いつまでも敵わないなぁと思いながら大人しく従って洗面台に手洗いとうがいの為に離れた。ここに越してきてもう1年が経つ。引っ越し祝いにもらったタオルだって今じゃもう古くなってしまっているし、同棲の記念にと彼女に強請られて買ったお揃いのスリッパもどこかくたびれている。
『あ、そうだ。この前旅行行った時の写真現像に行ってきたんよ。私もまだ見てないげ、後で一緒に見よ』
「この間の熱海のやつか」
『そうそう。調子に乗っていっぱい撮っちゃったからえらい量になっちゃった』
そういってローテーブルに食事を並べるAはどこか機嫌がいいようで、いつもより表情が柔らかい。元よりあまり機嫌を損ねる事の方が少ない彼女だけれど、口の悪い俺とは喧嘩の時張り合うかそれ以上に捲したてるほど恐ろしい変貌を遂げる。機会が少ないからこそそれはなかなかに怖いもんで、付き合い始めて3年になるが段々と上手く避けて通れるようにはなってきた。
「お、ハンバーグやん。嬉しい」
『ホント?よかったぁ』
「ありがとな」
最近はなかなか忙しくてゆっくりと2人飯を食う時間も減ってきてしまって、久しぶりの光景に少し申し訳なく思う。大体撮影が遅くまでかかるとメンバーと外で済ませてきてしまうから、きっとAは1人この部屋で飯を食っているんだと思うと、偶には真っ直ぐ家に帰ってこようって気になる。
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作者名:蒼姫 | 作成日時:2019年10月19日 15時