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『…どうでもよくなった?』
煮え切らない態度のてつやに痺れを切らして溜息を吐き出せば、今まで以上に表情を歪める。そんな顔したいのは私の方なのに、なんでお前がそんな顔するんだと言いたい。
『わかった、もう連絡しない。ここにも来ないし、金輪際関わらんようにするわ』
「ちょ、待ってって…!」
『煩い、触んな…っ』
「…A、なんで泣いてるん?」
踵を返して玄関に向かおうとすれば掴まれる右手。その温もりに涙が次から次へと溢れる。こんな終わりを迎えるためにてつやと出逢ったんだとしたら、私は彼と出会いたく無かった。強がって、平然とした顔でさよならがしたかったのに、掴まれた右手の力は強い。
「こっち向いて、A」
『やだっ、てつやなんて嫌い…っ』
「…俺はAのこと好きだよ」
『嘘だっ!』
「嘘じゃないげ…好きだから、酒の力であんなことしちまったの、すげぇ後悔して…なんて連絡したらいいか分からんかった。Aに嫌われたかもしれんって思ったから」
抵抗しない右手を引かれ顔を上げれば、まだ悲しそうなてつやの表情。でもその瞳には慈愛の色が見て取れて、優しい両手は頬を伝う涙を拭ってくれる。
「勇気が出んくて…待たせてごめん。でもやっぱりAのこと好きだし、このままさよならなんてしたくない」
『ふっ…うぅ、』
「Aは?やっぱり俺のこと嫌いになった?」
狡いと、そう思った。いつもの何かを強請るような顔をしているくせに、私の頭を掻き抱いて鼻の先まで近付けてそんなこと言うの。そんなの、好きって言葉以外、私には見つからない。
『好きだよ、ばかてつや』
「んふっ、ばかは余計…」
朧げな記憶の口付けが、今はっきりと思い出せる。柔らかくて温かくて、愛に溢れたそれに身を任せて瞳を閉じれば、もう友達の私たちにはさよなら。
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甘々なてちてちがすごく好きです。
クズ男なてちてちもすごく好きです。
2019.10.31 蒼姫
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作者名:蒼姫 | 作成日時:2019年10月19日 15時