夢で逢いましょう。 (ページ32)

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さよならページ32

Tetsuya×腐れ縁

「…あの、ごめんっ」

『…いーよ、別に。私も酔っ払ってたし』

それは、人生最大の大戦犯といっても過言ではない。寝起きの視界に入ったのは鮮やかなオレンジ色、見慣れているけれど見上げたことはない部屋の天井。すぐにクリアになる思考に、不思議と焦る気持ちはなかった。

「覚えてるん？昨日のこと」

『まぁ、断片的にだけど…てつやは？』

「意外とはっきり覚えとる…」

昔からの腐れ縁で、てつやとは頻繁に飲みに行く仲だった。昨日もいつも通り外で飲んで、飲み足らずにてつやの家で飲み直した。次の日休みなのをいいことにこれでもかと飲み倒して、いつもなら別々の場所で寝落ちするのが常だった。

『…とりあえず、風呂貸して』

「ん、バスタオルはいつものとこね」

これまでの付き合いで体の関係に一切発展しなかったのは、お互いその付き合い方が一番楽だと思っていたから。付き合いが長すぎてとてもそういう目では見られなかったから。うろ覚えでしかないから、どうしてそうなったか定かじゃないけど、長年のそれを覆す何かがあったのだということは間違いない。

『これからどうしよ…どんな顔して会えばいいの、』

冷静なふりして寝室を出たけれど、正直どんな顔して部屋に戻ればいいか分からなかった。そもそもてつやはどう思ってるんだろう、今回こんな事になって。そもそも、どれだけ酔っ払ったって今まで一度も手を出すことはなかったのに、どうして？

「ごめん、A！ちょっと呼び出しくらったから俺出なきゃならんのよ」

『あ、私も出るからいーよ』

「送っていけんでごめんね」

『とりあえず寝癖ひどいからてつやもシャワー浴びていけば？』

「え、マジ？そーするわぁ」

至って普通の様子の彼に拍子抜け。やっぱりてつやにとってはその辺どうでもよかったのかも、なんて。なんで私は自分が落ち込んでるのか分からず、それ以上考えたくなくてシャワーに行ったてつやを残して家に帰った。