夢で逢いましょう。 (ページ21)

今日:6 hit、昨日:12 hit、合計:63,906 hit

▽ ページ21

『もしもーし？今練習終わったところ？』

「今日は午後から雨降って、筋トレだけだったから終わるん早かったんよ。だから風呂待ち」

『合宿で遠征なんて大変やんね、お疲れ様』

少しずつ彼女との距離を縮めていき、勉強という口実がなくても自然と頻繁に連絡を取れる間柄にまで昇進した。今は夏合宿の真っ最中で、愛知を離れ隣の県まで遠征に来てる。合宿最終日、珍しくAから不在着信が入っていて折り返せばいつもより少し掠れた声が聞こえる。

「どうかしたん？珍しいやんね、Aから電話くれるん」

『んー、どうって程でもないけど…てつやくん元気かやぁって思って』

「あははっ、何それ。元気元気！無事に怪我なく合宿も終わったげ、あとは岡崎帰るだけだら」

『ふふっ、それはよかった』

「Aから貰ったミサンガのお陰でタイムも更新出来たし、いい合宿になったよ」

夏休みに入ってから一度だけ遊んだ時に渡されたそれは、夏休み明けの大会でいい記録が残せるようにと彼女が編んでくれたオレンジのミサンガ。それはそれは大喜びして、今も左足に揺れている。

『…なんか、てつやくんの声聞いてると元気出た、ありがと』

「ならよかった。Aが元気になるならいくらでも長電話してやんよ！」

『ふはっ、頼もしいね』

何時間そうしていたか、チームメイトに風呂を急かされたけど無視してグラウンドの脇まで出て電話を続けていれば、眠くなってきたのかふわふわとした口調でそう零す彼女にドキドキした。今すぐ会いに行って抱き締めたい衝動を抑えて平然とそう返せば、大好きなころころとした笑い声が聞こえて俺も笑った。

『でも…電話だけじゃなくて、直接聞きたいからさ』

「えっ」

『早く帰ってきてね、待ってる…おやすみ』

返事を待たずに切られた電話に放心する。はっと気付けば全身にぶわわっと熱が伝わって、外だということも気にせずじたばたと暴れた。本当に、可愛くて狡い女の子。

－－－－－－－－－－－－－－－－－－
sweet tweet/official髭男dism

甘酸っぱい、学生の恋的な。
ほぼ女子校的看護学校出身者の
私にはない青春←

2019.10.22 蒼姫