夢で逢いましょう。 (ページ17)

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春夏秋冬ページ17

『…まだ寒いね』

桜がちらほら咲き始める春には、貴方のことを思い出す。花見の日には張り切ってお弁当を作ったし、どれも美味しいって頬張ってくれた。まだ肌寒い春の風に吹かれながら、温かい腕に抱きしめられて見上げた桜は今みたいにまだ咲き始めだったけれど、よっぽど綺麗に見えたの。

『やばっ、また日焼けしたー』

日差しの強い夏の日には、また貴方を思い出す。撮影でこの時期は絶対こんがり焼けている貴方を見て、2人して笑った。海に行きたいとかキャンプに行きたいとか、色々理想を並べてはみたものの、お互い忙しくて叶わなかった。

『今年も綺麗に咲いてる』

燃えるような赤が揺れる秋の日は、やっぱり貴方を思い出す。私がそれを好きだと言えば、怪訝そうな顔をして笑ったね。貴方にもらう綺麗な花束も勿論好きなんだけど、私はやっぱり彼岸花が一番好き。

『あ、雪降ってきた…』

しんしんと雪が降り積もる冬の日、それでも貴方を思い出す。子供のように遊ぶ私と一緒になって遊んでくれて、2人して次の日風邪を引いたね。こんな大人になってって言われたけど、こんな日が続けばいいなって思っていたの。

『＿＿＿…』

貴方を思い出す度に、自然と口に出してしまう名前は、今でも私の耳に馴染んで離れない。いくつも季節は巡って、貴方と別れて何回目の春だろう。貴方も私も別々の道を歩んでいるのに、私の心はあの日に取り残されたまま。涙はとうに枯れて無くなったし、あの時の傷も癒えてはいるけれど、それでも記憶の奥底に染み付いた貴方を脳裏から追い出すことだけは出来ないままだ。

「A？どうしたの」

『ううん、今年もまた桜が咲き始めたなって思って』

届かなくていい、貴方は知らないままでいい。
それでもこうして時々思い出すことだけは、どうか許して欲しい。

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たまにはお相手フリーでこんなのも。
好きな方を思い浮かべて読んで頂ければ
幸いです。バッドエンドでしたけど←

2019.10.20 蒼姫