愛しい人 ページ1
Ryo×恋人
それは色々とタイミングが悪かったんだと思う。
『…ただいまぁ、』
重い足取りでやっとのこと家に帰りつけば、洋服のシワなんて気にすることもせずベッドにうつ伏せで倒れこんだ。壁掛けの時計を見上げれば22時を回ったところ、こんなに残業して帰ってきたのは久し振りだ。しばらくじっと秒針の動きを目で追うと家の中の生活音が全くしないことに不安や焦燥感に駆られ、腕だけ伸ばして取り出したスマホで音楽を流す。
『今日に限っていないんだもんなぁ、りょうくん…』
頭だけ反対側を向けても空っぽのベッドは、1人で寝るには随分広く感じてしまう。同棲を始める時に一緒に選んだダブルベッドは彼のサイズもそうだけどお互いきちんと疲れが取れるようにと慎重に選んだ。今ではお互いの家に泊まった際シングルベッドで窮屈な思いをしながらも寄り添って眠った夜が恋しい。
『もうこのまま寝ちゃお…』
彼は昨日から動画の企画で二泊三日お泊まりに出掛けているから今日も帰っては来ない。寝られない企画だから常にカメラは回っているだろうし連絡が来ないのも仕方がないといえばそうだ。それでも、どうしても。今日だけはそばに居て欲しかったと思うのは私のわがままで。
『おやすみ、りょうくん…』
頬を伝う水分を拭うことも煩わしく感じて、逆らうこともせず瞼を閉じた。明日はやっと休みだし、何も気にしなくていい。きっと彼が帰ってくるのは昼過ぎかもしくは夕方までかかるかもしれない。少し休んで気持ちを切り替えて、美味しいご飯と温かいお風呂を準備して迎えればいい。色々と思考を巡らせるうちに直ぐに睡魔はやってきて、ふわふわと浮かぶ意識はずっしりと水を含んで重くなってしまったような心を置いていった。
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作者名:蒼姫 | 作成日時:2019年10月19日 15時