君と僕と僕らと (ページ32)

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長年の付き合いで、お互いに遠慮のない関係であることは事実だった。しかしそれが恋人に変わった途端、私自身どうしたらいいかわからないと思ったことも事実だ。これまでのように無遠慮に物を言えない、彼女なのだから気を遣うべきだ、彼の負担になってはいけないと。

『そうやってあれこれ考えて、最初は我慢して関係がスムーズにいくならそれでいいと思ってたの。でも…それじゃダメだよなって』

自分の性格は嫌ってほど理解してるつもり。今は我慢が出来たとしても、それはほんの一瞬のことでいつかどこかで爆発してしまうだろう。多忙で、干渉されることを嫌う彼に募り募った想いを伝えてしまっては、きっと離れて行ってしまうだろう。だからこそ、思いの丈は伝えるべきだということはわかっている。自己犠牲の元に平穏に続く愛などない事もわかっているのだ。

「まぁなんというか、あんたは甘え下手過ぎるのよね。そんなに彼氏は小さい男なの？」
『え？』
「だってさ、自己犠牲って言った手前悪いけど、他人を優先する優しさはあんたの本音でしょ。それを本音ズバズバ言えなんて無理しなきゃいけないってそれおかしくない？爆発しちゃうあんたも、受け入れられないほど小さい男なわけ？」

「詳しくは知らないけど、昔からの仲なんでしょ？あんたの性格なんて私よりよくわかってるんだろうしさ、今言ったことも含めて全部本音をぶつけたところで、全部理解してくれると思うけどね」
『私の、全部…』
「てか、そうじゃなかったらただのバカ。んで見る目ないあんたもバカ」
『それは酷い言い様…』

片想いが長かった分、実った恋が終わってしまうことが怖くて仕方なかった。どうすれば嫌われないかということばかり考えていた。でも彼女の言う通りだ、私のこういう面倒臭いところもきっとシルクは知っている。知っている上で好きになってくれたのだ。それを疑ってしまっては、私が好きになったシルク自身否定することになってしまう。

「まぁ理解したところで…あんたの携帯煩いから王子様に迎えに来てもらいなさい」
『…シルク、』
「まぁ、クソみたいな男だったら一発くらい殴ってやるから引きずってうち戻ってきな」