君と僕と僕らと (ページ4)

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少しずつ、ふわふわと覚醒する意識とは裏腹に、重りがついてしまったのではないかと思うほど持ち上がらない瞼を争うように持ち上げると、一瞬息を呑んだ。見馴れたその厚みのある唇が少しだけ開き、ちょうど私の額の辺りに穏やかな吐息を掛けている。何故、彼はこんなところで寝てるのか。いや、何でこんなに近距離なのか。一瞬冷静さを欠いた頭はすぐにそれを取り戻し、私は音を立てないようにそこから距離を取った。よく見るシルクの寝顔だ。いつの間に帰ったのだろうか、いつ眠りについたのだろうか、というか今何時？

『…15時、』

自分が大体5時前後に帰宅したことは覚えている為、思いの外熟睡したことに驚いた。それに伴い体の節々も悲鳴をあげる。ほんと、炬燵なんかで寝るもんではない。時間を確認した際に確認した通知で、憲さんから返信が来ていたことを思い出し昨晩のお礼を送る。毎度こうやって謝罪をするたび後悔はするのだが、私の数少ない息吐けるあの場所はいつだって私の心の枷を外して開放的にしてくるものだから、キリがない。送信を確認して隣の彼に目を向ける。少し肌寒そうに丸まる姿に炬燵の電源を少しだけ強めて、昨日落とさずに寝てしまった化粧を落とそうと浴室へと向かった。

『…はよ、起きてたんだ』
「…ん。どっか出掛けんの？」
『いや、化粧落とさずに寝たから風呂入っただけ。シルクは？』
「俺も今日はオフ…風呂入ってこようかな」

浴室から戻ると、もそもそと起き上がる動作を始めた彼がいた。睡眠の短い彼を起こしては申し訳ないとドライヤーをかけずに出てきたことを少し後悔した。ひとつ、ふたつと頬を滑る雫に鬱陶しさを覚えると、伸びてくる影に私の動きはぴたりと停止した。

「風邪引くぞ。ちゃんと乾かせ」

右の手の親指と人差し指が、私の左頬に触れる。流れ落ちた雫の後を撫でるように滑る指を辿るように顔を上げると、私はこれでもかというくらいに目を見開いたに違いない。こちらに向けるシルクの瞳が、寝起きとは別の意味で熱をはらんでいたのが手に取るようにわかったからだ。