君と僕と僕らと (ページ27)

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『今日さ、外に食事に行きたいんだけど夜って時間空いてる？』
「いいぞ」
『仕事終わったら連絡するね』

ふと朝の会話を思い出しながら、仕事終わりにシルクに連絡を入れた。初デートなるものから早一週間。今日は、シルクをある場所に連れて行こうと決めていた。退社準備をしながら震えるスマホを覗くと外にいるの文字。同僚への挨拶もそこそこに早足で外に向かう。

『いつから待ってたの？』
「近くぶらぶらしてたから。お前から連絡きたタイミングで来ただけだよ」

これも彼なりの気遣いなのだろうと察しはしたが、指摘してしまうと格好がつかないだろうと深追いはやめた。近くだからと店まで歩いて向かう道中は他愛もない話をした。どこに向かっているのか気にする様子はあったけど敢えて私は伝えなかった。驚かせたい、よりは何も聞かないで欲しかったから。

「お、いらっしゃい。今日はお連れ様も？」
『こんばんは、憲さん』

そう声をかけると、隣のシルクの動きが一瞬止まったことを察した。彼と付き合ってから店に来ることはなかったが、私としては好きな憩いの場所であるしシルクにも知っておいて欲しかったという勝手なエゴである。

『とりあえずビールでいいでしょ？』
「おー」
『私も同じで』
「はい、ただいま」

カウンターに横並びで座り、随分間を空けたなとお店を見回すが特に変わった様子はない。変わったことといえば隣に並ぶ彼がいることで、その表情を見るに以前私が酔っ払って帰ってきた時に憲さんが自宅まで送ってくれたことは覚えているようだ。敵意、とまではいかないが変な緊張感を漂わせているシルクを見て何も言わずに連れてきたことに申し訳なさを感じたが、目の前に運ばれてきたグラスに思考は停止し、とりあえず乾杯をした。