君と僕と僕らと (ページ19)

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「あいつがあんな風に泣くとこなんて、見たことねぇんだよ…俺、もうこれ以上あいつのこと悲しませたくねぇよ…っ」

弱々しく膝を抱えたシルクの声は震えていた。結局二人は同じ気持ちなのだ。恋愛感情よりグループのことを考えてしまう、自分の気持ちよりも相手の気持ちを尊重してしまう、自信がないからマイナスに考えてしまう。側から見たら実にもどかしい。

「じゃあ俺が貰っても文句ねぇな？」
「は？」

やっと顔を上げたシルクの表情はとても滑稽だった。こんなのただの負け惜しみだ。それでも、彼女の笑顔を守れるのはこの男しかいないというのに。俺にしてやれる事はこれくらいだから。

「俺だって、昔からあいつのこと好きだよ」
「お前、いつから…」
「フィッシャーズ結成当時からずっとだよ。だからAがお前のことしか見てなかったのも知ってるし、関係が壊れるのが怖くて何も言い出さなかったこともずっと知ってたよ」

Aが笑っていてくれれば俺の想いが届かなくたっていいと思ってた。ただそばにいて、支えてやれたらいいと思ってた。けどこいつがAのこと守れねぇっていうなら、今度は直接俺が彼女を守りたい。陰ながら支えるのではなく。

「あいつの気持ちはどうなるんだよ…フィッシャーズを守りたいっていうあいつの思いは！」
「まだそんなこと言ってやがんのか！だから守ればいいだろ、お前が！それに俺らは守られなきゃ何もできねぇ奴らなのか？メンバーの幸せも願えない小せぇ奴らだと思ってんのかよ！」
「マサイ…」

悪い、そう告げてシルクはやっと重い腰を上げて部屋を後にした。もう俺に出来る事はここまでだ。どうか幸せになってほしい。だけど、今だけ涙を流す事をどうか許してほしい。君を想い続けた9年間は、俺にとっての全てだったから。