君と僕と僕らと (ページ15)

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沈黙がこれほどに重苦しいと思ったことも、こいつがこんなにも何考えてるか分からないと思ったことも、きっとこれまでを振り返って一度もない。時間にしては僅かだったかもしれないが、何十分にも何時間にも感じたそれは彼女の申し訳無さそうな、力のない笑みで途切れた。

『…ごめん、シルク』

あぁやっぱりか。そんな言葉が頭を過ぎった。昔は好いてくれていたからといって今もそうとは限らない。人の気持ちは時間と共に移りゆく。俺だってこいつだって知らないうちに大人になった。今そうじゃないことだって当たり前にある話だった。重い空気を払拭しようと顔を上げると、涙を浮かべた双眼に言葉を失った。

『嬉しい、嬉しいの…私、ずっとシルクのこと好きだった。こんなに長いこと一緒にいるけど、その気持ちが変わった事はなかった。シルクが私に気がないのは明らかだったし、ずっと諦めてたから…』

今にも零れ落ちそうなほどに膜を張って睫毛の上で震える雫を見つめ、彼女の言葉を聞く。悲しげに笑うAは、とても嬉しそうには見えなかった。彼女は好きだった、と言った。言葉の続きを待つあまり息をするのも忘れた。彼女の表情をそうさせてるのは何故だろう、俺には分からない。

『片想いが長過ぎたせいかな…？それとも慣れちゃったからなのかな。よく言えないけど、怖いの』
「怖い？」
『何も考えずにシルクを好きって言えるほど、私は子供じゃなくなった。自分に自信もない、ファンの目もある、メンバーだってきっと気を遣う』
「それは…」

正直何も言い返せなかった。確かに告白をした時はフィッシャーズのこともリーダーであることも置いて一人の男として彼女に気持ちを伝えた。しかし彼女はそうはなれない。俺やメンバーやファンを天秤にかける事すらしない、そんなリスクを負うなら自分が少し我慢すればいいとすら思う奴だ。それほどに彼女は優し過ぎるし、その実臆病だ。