十五の巻 ページ17
ここは遊郭
「どうした、太夫。元気ないじゃないか？」
ab「いえ、そんな事は」
大切なご贔屓さんとの一間
「何か悩み事でも？」
ab「旦那・・黒影組って知ってます？」
そう言うと、馴染みのご贔屓役者は顔を顰めた
「・・随分と物騒な名前を出すね。知らない者など居ないだろう？」
ab「でも、何やら揉め事が起きてるって噂を聞いたもので」
「あぁ、リーダーの官兵衛の右腕と言われてた男が組を抜けて、組から追われてるって話だな」
ab「その男って・・？」
「まだ見つかってないらしい。けれど、時間の問題だろうな」
ab「会ってみたいねぇ、その方に」
「随分と物好きだね」
ab「会わせておくんなまし」
「そうしたら、私の物になってくれるかい？」
ab「・・そういう気持ちに、なるかもしれませんね？」
お亮に出来るのはここまでだった
自分は鳥籠の鳥
自分では何も出来ない
お客に夢を見させる事は出来ても
夢を見る事は許されない
ﾆｬ-ﾆｬ-
裏の猫が鳴いている
まさかと思って裏に出ると
ab「蓮様・・」
思っていた通り
気性の荒い猫が
めぐろの腕の中で
撫で声を出している
mm「お亮さん、こんばんは。その姿もお綺麗ですけど、やはり俺は、いつものお亮さんの方が好きですね」
ab「ここには来ないようにと、言った筈です。見つかったら、どんな目に合うか」
mm「それでも俺は、お亮さんに会いたい。この気持ちは、抑えられません」
ab「・・っ、人が来ます。私は今、見張られています。早く逃げて下さい！」
お亮がそう言うと
めぐろは静かに居なくなった
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作者名：おまる
| 作成日時：2021年5月5日 3時
