もう、知らない。【Satoshi】Part2 (ページ19)

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67 智side ページ19

2組目の6人の中にAは6レーンにいた。

3レーンから7レーンのちょうど外側から２番目。

Aはひとつに結んだ長い髪をなびかせて力強いピッチで前に前に進んでいる。

…速い。

最終カーブに差し掛かった時点でAは５番目の位置だった。

選手自身が持つ参考タイム順に組とレーンが決まる短距離は、タイムが速い人はその組の真ん中の2～3レーンの間に集中する。

だからやっぱりそのレーンの人は突き出てきた。

風を切って走るAの姿はすごくキラキラしててかっこよかった。

最後のホームストレートをあっという間に駆け抜け、２組目のレースは終わった。

電光掲示板に表示された２組目のタイムは、やっぱり２５秒台を出していた。

その中でAは26.38秒。

このタイムが点数換算され、１日目の合計得点に加算される。

Aは自分が走ったコースに振り返り「ありがとうございました」と言いながら深々とお辞儀した。

そしてスタンドにいる俺らのところを見てにこっと笑い、ありがとと言って小さく頭を下げた。

その表情はとても清々しく、今の走りに後悔がないように思えた。

俺らはAの頑張りに拍手を送った。

智「A速かったね」

和「ですねぇ」

智「これで１日目終了か」

和「先輩やり切ってましたね。県の時ほどの調子ではなかったように思えましたけど」

智「そりゃ県大会以上の緊張もあるだろうし、レベルの違いを目の当たりにしてるだろうしね」

和「それは大野さんも感じてるんでしょ？」

智「そりゃな」

でも俺と違って７つもこなすのは本当凄いよな。

１日で４種目もやるのなんて絶対俺にはできない。

それを１つずつこなしていく混成選手はもう尊敬レベル。

あとでAにジュースでも差し入れしてあげようかな。

ひとまずお疲れ様、A。