お前の作る歌が歌いたい【聖川真斗】 (ページ20)

今日:2 hit、昨日:5 hit、合計:13,393 hit

心配していたページ20

「こんな時間にすみません…。あの、聖川さん、熱あるんです。」

私は早口で説明したが
神宮寺さんは理解したようで
聖川さんのもう片方の肩を支えて
ベッドへ運んだ。

「A…。」

聖川さんは私の名前を呼び、
手を伸ばしてきた。

私はその手を両手で包むように
ギュッと握った。
すると安心したのか
眠り始めた。

「あ…寝ちゃいました。」

私がそう言うと
神宮寺さんは笑った。

「君のことが心配だったんだろうね。部屋の中でも『もう帰ってきたのだろうか』とか言っていたよ。」

聖川さん…。

「聖川は俺に任せて。一応、看病するよ。はやくここを出ないと、俺が何をするか分からないよ？」

神宮寺さんが言うと
寝ている聖川さんの眉間に
シワが寄った。

「おっと、寝てても分かるみたいだね。冗談さ。でも、はやく行かないと見つかって怒られちゃうからね。」

「そうですね、それでは。おやすみなさい。」

私は借りた上着を脱ぎ、
部屋を出た。

自室につくと、
ともちゃんはもう寝ていた。

私は、作曲をすることにした。
もう少しで完成する曲があるから。
そう、一ノ瀬さんの曲…。

きっと、すぐ終わる。

でも、作業中も聖川さんの
つらそうな顔が浮かんで集中できない。

「本当に大丈夫かな…?」

ダメだ、今日はやめておこう。
いいのが出来ないと思うし。

というわけで、私は寝ることにした。

翌朝。

「A、ほら起きて。」

ともちゃんの声で目が覚めた。

「昨日、コンサート終わるの遅かったの?」

「ううん。帰ったら、聖川さんが私を待っててくれてて。それで…」

説明すると、ともちゃんは
驚いた顔をした。

「大丈夫なのかな…?あ、コンサート楽しかった?」

「はい…。」

「ん?どうしたの?」

「いえ、なんでもないです。」

一ノ瀬さんを思い出した。

「かっこよかった?やっぱり、一ノ瀬さんにソックリだったの?」

一ノ瀬さんの名前がでて
ビックリした。

「え、あ、うんうん。似てました。でも、違いましたよ、あはは。」

「だよね、うん。さ、準備しようか。」

「はい。」