ー花火ー 今市隆二 × 登坂広臣

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一度止まったはずの涙が
とめどなく溢れ出した。


涙で滲んでまた前が見えない。


隆二さんはあれから寄り添ったまま
私の話を静かに聞いてくれている。






隆『その時からずっと…好きな人はできなかったの？』




好きな人は何度かできた。


恋い焦がれる人ができて
その人も私を好きになってくれて。


でもその人が近付こうとすればする程
私は逃げた。


想い出に縛られた臆病者。




結局平行線のままで愛想を尽かし
私の前から姿を消す。

でもそれで胸を撫で下ろす自分がいた。


勿論その人達は全く悪くない。
悪いのは全部私。





「私もう人を好きになる事さえ…
怖くなってるのかも…しれないです…
誰かを好きになって…もう…あんな思い…したくっ……な…い…って』

　


私の嗚咽の混じったような声が
漏れ始めた時……







隆『もう……こっちおいで……』






身体ごと抱き寄せられて。

いつしか私は隆二さんの腕の中に居た。

　


驚いて離れようとすれば、
更に力を増して

何も言わず…
ただぎゅっ…と抱きしめられて。



あの甘美な香りと共に。

私の荒んだ心まで
包み込んでくれているような気がした。






「りゅじ…さん…涙で……服…汚れ」

　


顔を上げたら視線が合って。





隆二さんは自らTシャツを捲って…

私の涙をグリグリ拭いた。





痛いです…と呟けば

ほらまた涙が…とグリグリされて。



お互い顔を見合わせて
　
ほんの少しだけ笑った。





隆『ずっと一人で抱え込んで…辛かったね、
よく話してくれた、ありがとう』




その言葉に。

張り詰めてた糸がプチっと音をたてて
また涙が溢れた。
枯れる事を終わらせてくれない。




苦しい位にぎゅっと…

隆二さんに引き寄せられる。





背中に廻った腕が温かくて…

頭の後ろを覆う大きな手が優しくて…

首から微かに感じるあの香りが心地良かった…








「何だか……安心……します」


隆『ん？』


「隆二さんの腕の…中………」





泣き腫らした瞼が重い…


瞬きが次第にゆっくりになって…
意識が飛び……そう





.



.








隆『Aちゃん…寝た？』


隆『お、寝ちゃったか…思う存分寝な』






夢の中へ誘われた私を。
隆二さんはぎゅっと抱き抱えながら。







隆『あー…そいつ一発殴ってやりてーよ、足んねえけど』


隆『もうそんな思い俺が絶対……』






行き場のない怒りを
ひたすら吐き出し続けた。

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