ー花火ー 今市隆二 × 登坂広臣

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シートベルト未装着の事を謝る私に。



Aちゃんに何かあったらやばいんで。

とハンドルを握ったままの
その横顔がやさしく微笑んだ。








隆『お、ここ曲がったらもうすぐっすね！』






今市さんがハンドルを緩やかに切り、
少し走ってから路肩に車を停車させると。





隆『ちょっと待ってて下さい！』





慌てて車から出ていった後、
何故か全速力で戻ってきた。






隆『いやータイミング悪すぎたみたいっす』





理由を聞いて二人で笑った。

改装のため休業中の張り紙がしてあったと。







「でももう場所覚えましたっ！ありがとうございます！！…じゃあそろそろ帰ります！」




隆『まだ……俺は帰りたくないかな……なんて。』








帰りたくないかなって…
どういう……意味…




はっ…///








私の思考回路が
…………停止寸前です。









そのまま何食わぬ顔で車を走らせてる今市さん。

何もなかった事なってる。






ぐるぐる道を回ってここが一番近い薬局で、
ここが二番目に近いコンビニで、
ここが郵便局で、

丁寧にガイドし始めた。





また今市さんの優しさ攻めを
真っ向から受けても。



あれから思考回路が停止しかけてる私は。



へーここなんですねーを
繰り返しながらも実は空返事で。





場所を覚える意識の余裕がない。




すると急に路肩に車を寄せ停車して。

ハザードランプが
カチカチと響く中。





隆『Aちゃん飯食いに行きましょう！』


「え？」


隆『あ、腹減ってない……？』


「あ…」





そういえば私…
今日何も食べてなかった、と今更気付いた。







隆『じゃ決まり！飯食いに行きましょう！』


「え、でも……」






今市さんの優しさ攻めの合間に見え隠れする
強引なリード。




いや、もう決定したんで無理です！
と私に微笑み返す。









隆『あーもしもし！今市ですけど！はい！あ、個室…二名………え、まーじっすか！今から行きます！』








助手席に座る私にも聞こえてくる。




名前を名乗る位だから、
馴染みのお店に空席を確認してくれているんだろう。




最初は遠慮してたくせに。

やっぱり飲食業で働く身としては
どんなお店なんだろう…と期待で胸を
わくわく踊らせてしまう。

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