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_HS
今日の分のダンスレッスンを終え、ふらふらとおぼつかない足取りで水分補給に向かう。
ようやく水筒に辿り着き一息ついた後、周りを見渡す。
ただでさえ練習がきついと言われるこの事務所。それなのに、今日はいつもに増してきつかったように思う。
実際、指摘がいつもより多かったのも事実だ。それは俺だけじゃなくて、ジフンやスンチョリヒョンたちもそうだった。
冷静になった今なら分かる。皆力が入りすぎていたのだ。
あの人に負けたくないと思うあまり、意識が全てあの人に向いてしまった。
悔しい。悔しい。悔しい。
あの人は、体力を戻せということ以外は何の指摘も受けなかった。
事務所を辞めてからというもの、一度も踊ったりしていなかったそうで体力が落ちてしまったらしい。
圧巻だった。
今日初めて合わせたとは思えないほどに揃う振り。あの細い体のどこから出ているのかと疑いたくなるような迫力。それでいてしなやかさも併せ持ったダンス。
そして何より、表情管理。正直、俳優業やってもいいんじゃないかと思うほどに表情が曲に合わせてコロコロと変わる。
あぁ、踊るってこういうことかと改めて認識させられた。
「…ョンさん、スニョンさん?」
HS「うぁっ?!え、何…っ、」
突如かけられた声に慌てて返事をする。
なんかデジャヴ。今日同じことやったような気がするのは気のせいか。
かけた声の主はあの人だった。
必然的に目が合い、息が止まりそうになる。
元々画面越しに見ていたころから思ってはいたが、本当に綺麗な顔をしている。女子だといっても通じるほどに甘い甘い顔。
自分の顔に熱が集まるのが分かった。
「この後、練習室俺も残っていいですか?」
HS「え、あの、なんで俺に聞くんですか?」
「さっきトレーナーの方に確認したら、いつもスニョンさんが残って使ってるって聞いたので」
問われた言葉は意外にも、居残り練習についてだった。
…あんなに上手いのに、まだ練習するのか。
HS「そっちが良ければ…俺は別に」
「…ありがとうございます」
ぶっきらぼうに響いた言葉に、にこりと笑顔を作ってお礼を言われる。
自分の器の小ささに泣きたくなった。
その日、居残り練習で踊るあの人は、やっぱり凄かった。
けれども、たった二人の空間だというのに、俺たちの間に会話はなかった。
仲良くなるにはもう少し時間がかかりそうだと思った、真夏の深夜。
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揚羽(プロフ) - はにわさん» この作品以外もお気に入り登録してくださっているなんて…!感謝感激何ちゃらです!笑 この作品含め他の作品も、どうか今後もよろしくお願いします!♡ (5月1日 14時) (レス) id: dc7b6890ce (このIDを非表示/違反報告)
揚羽(プロフ) - シヒさん» ありがとうございます!時々雑談目的で帰ってくることもあるので、お暇があるときに覗いていただければ嬉しいです^^ (5月1日 14時) (レス) @page31 id: dc7b6890ce (このIDを非表示/違反報告)
はにわ(プロフ) - お気に入り登録していた作品が一気に公開されたのでなんでかなって思ってたら全て作者様のものでした!少し寂しい気持ちもありますが、受験頑張ってください!やはり人生の壁の一つですね。悔いの残らないよう最後まで頑張ってください!応援しています! (1月14日 22時) (レス) @page30 id: 5308802bda (このIDを非表示/違反報告)
シヒ(プロフ) - しっかりとした目標を持ち勉学に励む作者様を尊敬します。陰ながら応援しています!来年の春また会えることを楽しみにしています。 (1月14日 22時) (レス) @page30 id: ccff3e8fe9 (このIDを非表示/違反報告)
揚羽(プロフ) - (名前)ひなたさん» ありがとうございます😌 (6月25日 19時) (レス) id: 48d0ed6c97 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:揚羽 | 作成日時:2023年5月28日 22時