花瓶の花【カタクリ】 ページ26
「あ…」
部屋の中に活けられた、花瓶の可憐で小さな白い花。それを見て、私は胸を撫で下ろす。
(あなたの帰還を知る方法は、これしかないものね…)
ビッグ・マム海賊団のカタクリ様のもとに嫁いで、間もなく1年が経とうとしていた。けど、彼が私に会いに来ることは、ほとんどない。
そんな中、自室に花が飾られていることに気がついた。いつもカタクリ様が遠征から帰還する日にしかいけられないそれが、いつしか私にとって安心と癒しをくれるものになっていた。
(にしても、この花…誰が？)
微かに香る花の匂いを嗅いだ時、目の前の鏡が叩かれた。顔を上げると、見慣れた顔がこちらを見つめている。
「まあ！ブリュレ様…！」
鏡の向こうで手を振ると、ブリュレ様がふと花瓶に目をとめた。
「…！あら、その花…」
「ええ、とても可愛らしくて素敵でしょう？でも…いつも誰がくださるのか知らなくて…」
ブリュレ様が驚いたような顔をする。
「もしかして、ご存知なの！？」
「知ってるけど…本当に知らないの？」
「ええ」
ブリュレ様はひとつ息をついた。
「そこにいるから、聞いてみて」
「…？どういう─きゃ！」
ブリュレ様に手を引かれ、よろめきながら鏡の世界へ飛び込んだ私を、大きな手が受け止めた。
「…！A…？」
驚いたような声が頭上から降ってくる。ハッ、と顔を上げるとカタクリ様と目が合った。
「っ！失礼を─」
慌てて体を離すと、カタクリ様は少し目を逸らした。
「気にするな。それより…ブリュレと何かあったか」
振り返るとブリュレ様は既に鏡の外へ出てしまったらしい。おずおずと私は口を開いた。
「…花のことを、聞いていたのです」
「花…？」
私は部屋の中にある花の話をした。そして、花をくれる人にお礼を言いたい、ということも伝えた。
「…？カタクリ様？」
カタクリ様が困ったような、照れたような顔をしている。今まで見たことの無いその表情に言葉を継げないでいると、彼が躊躇いがちに私に触れた。
「俺だ」
「え？」
予想外の言葉に、思わず目を見開く。
「お前に、似た花だったから…」
なんという声で、そう言うのか。
「喜んでいたのか」
なんという目で、私を見つめるのか。
「よかった」
あなたから愛されることなどないと、思っていたのに。
「…！A、なぜ泣くんだ…！？」
(ああ、私、ちゃんと貴方に愛されている)
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りと(プロフ) - 箱さん» お返事が遅くなってすみません！箱さん、こちらこそ素敵なコメントをありがとうございます。最近なかなかいい作品が出来ていなくて心苦しいところですが、これからも応援していただければ嬉しいです！ (5月15日 1時) (
レス) @page26 id: 4416da2808 (このIDを非表示/違反報告)
箱 - ステキな作品を書いてくれてありがとうございます (2023年2月23日 22時) (レス) id: e97eef8072 (このIDを非表示/違反報告)
りと(プロフ) - 逆叉さん» 逆叉さん、初めまして！お返事がとんでもなく遅くなってしまい、申し訳ありませんでしたm(__)mリクエスト、承りました！しばらくお時間をいただきますが、よろしくお願いします(^^♪ (2022年11月21日 0時) (レス) id: 4416da2808 (このIDを非表示/違反報告)
逆叉(プロフ) - 初めまして！りとさんの書き方大好きで、気に入ったお話を何度も読み返しています…(*^^*)もしよろしければ、三馬鹿船長のロー、キッド、ルフィで夢主と絡ませて欲しいです！3人では大変でしたら、この中の誰かだけでも大丈夫です！ご検討頂けたら幸いです。 (2022年10月10日 23時) (レス) id: 6858122218 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうなぎ(プロフ) - 本当に素敵な作品でした！ スマートにあれこれと優しく気を回してくれるサンジくんのラストのセリフが「好きだ」と真っ直ぐなのがとてもたまらないです！今回もありがとうございました。 (2022年9月23日 22時) (レス) @page21 id: ca7d16e763 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：りと | 作成日時：2021年8月13日 2時
