拐【ロブ・ルッチ】 ページ16
拐かしてしまおうと思うほどには。
「お前、今日は帰れよ」
念を押すようにそう言ったパウリーに、私は微笑んだ。
「うん、仕事が終わったらちゃんと帰るよ」
「納期未定、延長可能のアレか？」
バレたか、と苦笑する。
(まあ、今はこんなだしな…)
目の下には濃いクマがある。疲れて顔色も悪い。髪はパサついてるし、ろくにご飯も食べてない。
「あんな事があった後だけど…体は大切にしろよ」
(あんな事、ね)
先日起こった市長暗殺未遂事件。その首謀者を見た時は、心臓が止まるかと思った。
私はルッチの恋人だった。
がむしゃらに製図し続けていた私を、パウリーは無理やりドックから放り出した。さらには、部下に言いつけて私を送り届けさせることまでした。
そういうわけで、いま私は自分の家の前だ。
(ほんの少し前まで、ここにルッチといたのにね)
その家に帰るのが、辛い。
私の恩人を殺そうとした人間を、好きでいる自分を自覚してしまうのが、辛い。
「…ただいま」
仕方なくドアを開けた時、ふわりと風が吹いた。
(窓、開けてた…？)
慌てて部屋の中へ入った時、呼吸が止まった。
「ルッチ…？」
頭がおかしくなったのだろうか。思わず後ずさった私を、黒い目が映す。
「久しぶりだな、A」
色々と言いたい言葉はある。どの面下げて、とか、なんであんなことを、とか。でも、言葉が出ない。
「会いに来た」
「な……い、今更…」
「恋人に逢いに来ることの何が悪い」
カッと頭に血が上った。
「バカにしないでよ！！」
出てって、と叫ぶ私の前にルッチが立った。腹でも立てて、私を殺すか。それでもいい。こんな惨めな私なんて、さっさと殺してほしい。
「…泣かせる気は、無かったんだが」
ルッチの手が、私の目元を拭った。その手の優しさに驚く。アイスバーグさんを殺そうとした手が、今は─
「俺は…ただ、お前を連れていこうと思っただけだ」
「連れて、く…？」
どこへ、と問うより早く、ルッチは私の口と鼻に何かを当てた。強い薬品の匂いと共に、意識が朦朧とし始める。
「この5年、嘘は多くついたが、仕事とお前のことについては嘘はつかなかった」
体に力が入らない。
「俺以外のものになるお前なんて、吐き気がするほど嫌だ」
視界が狭くなっていく。その視界の中、ルッチの目は獲物を見つけた肉食獣の目をしていた。
「愛してるぞ、A」
too good at goodbye【カク】→←loving DARLING【パウリー】
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りと(プロフ) - 箱さん» お返事が遅くなってすみません！箱さん、こちらこそ素敵なコメントをありがとうございます。最近なかなかいい作品が出来ていなくて心苦しいところですが、これからも応援していただければ嬉しいです！ (5月15日 1時) (
レス) @page26 id: 4416da2808 (このIDを非表示/違反報告)
箱 - ステキな作品を書いてくれてありがとうございます (2023年2月23日 22時) (レス) id: e97eef8072 (このIDを非表示/違反報告)
りと(プロフ) - 逆叉さん» 逆叉さん、初めまして！お返事がとんでもなく遅くなってしまい、申し訳ありませんでしたm(__)mリクエスト、承りました！しばらくお時間をいただきますが、よろしくお願いします(^^♪ (2022年11月21日 0時) (レス) id: 4416da2808 (このIDを非表示/違反報告)
逆叉(プロフ) - 初めまして！りとさんの書き方大好きで、気に入ったお話を何度も読み返しています…(*^^*)もしよろしければ、三馬鹿船長のロー、キッド、ルフィで夢主と絡ませて欲しいです！3人では大変でしたら、この中の誰かだけでも大丈夫です！ご検討頂けたら幸いです。 (2022年10月10日 23時) (レス) id: 6858122218 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうなぎ(プロフ) - 本当に素敵な作品でした！ スマートにあれこれと優しく気を回してくれるサンジくんのラストのセリフが「好きだ」と真っ直ぐなのがとてもたまらないです！今回もありがとうございました。 (2022年9月23日 22時) (レス) @page21 id: ca7d16e763 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：りと | 作成日時：2021年8月13日 2時
