傷【トラファルガー・ロー】 ページ14
「それじゃ、行くわ」
熱っぽく俺を呼んだ声が嘘みたいに、お前はあっさりとそう言った。何も言わずにするりと髪に指を通すと、くすぐったそうに笑いはしたが、そっとその手を押しのけられる。
「みんなを待たせては悪いから」
柔らかくも、どこかきっぱりとしたその声が、今は憎たらしい。俺は体を起こすと、帰り支度をするAの体に腕を回した。
「ロー」
子どもをあやすような、少し呆れたような声が俺の名を呼ぶ。肩に顔を埋めた俺の頭を、細い指が優しく撫でた。
「仕方ないでしょ。私とあなたは、違う船の海賊なんだから」
「…。」
わかってはいる。目の前にいるこの女は、麦わら屋の船のクルーだ。そして、この女は俺のために船を降りることはない。それでも、言いたくなる。
「お前、俺の船に来ないか」
「行かない。私は、まだみんなのそばにいたいから」
いつも別れる時間が来ると、俺がそう問いかける。そして、決まりきった返事が返ってくる。そうとは分かっていても、未だに慣れない。腹の中に渦巻くどす黒い感情に飲み込まれそうになる。
(ああ、こいつの脚を奪ってしまいたい)
スラリと伸びた白い脚を俺の能力で切り刻み、海の底に投げ捨ててしまいたい。そうすれば、Aは俺のそばにいるしかなくなる。俺に助けを求め、俺に縋り付くお前にしてしまいたい。
そんなお前を俺の部屋につなぎ止めよう。｢帰して｣と泣き叫ぶお前を優しく抱きしめ、俺のそばに縛り付けてしまおう。そして、いつかは誰も知らない…お前の仲間も来れない場所に、お前と2人で暮らせたら。
そこまで考えて、俺は身震いした。これじゃ外道だ。それに、俺が愛したのは自由を愛するAのはずだっただろう。
「ロー、朝日が昇ってしまうわ」
優しく別れを促す声に、呻くように返事をする。
ああ、どうしてお前に出会ったのが俺ではなく、麦わら屋だったんだろう。俺が先に出会っていたなら、こんなことにはならなかったのに。
「ロー」
「…わかってる」
手に入らないとわかっていても、欲しくなる。だが、今の俺はお前の心には触れられない。なら、せめて…
「っ…！！」
痛みにAが顔をしかめた。その白い肩に赤く歯型が浮いている。ツゥ、と流れた血を拭い、その傷口に唇を触れさせる。
(この傷が跡形もなく消えるまでは…)
そっと傷の周りに指を這わせた。
(嫌でも俺のことを考えてくれるだろうか)
loving DARLING【パウリー】→←たとえ、あなたが【クロコダイル】
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りと(プロフ) - 箱さん» お返事が遅くなってすみません！箱さん、こちらこそ素敵なコメントをありがとうございます。最近なかなかいい作品が出来ていなくて心苦しいところですが、これからも応援していただければ嬉しいです！ (5月15日 1時) (
レス) @page26 id: 4416da2808 (このIDを非表示/違反報告)
箱 - ステキな作品を書いてくれてありがとうございます (2023年2月23日 22時) (レス) id: e97eef8072 (このIDを非表示/違反報告)
りと(プロフ) - 逆叉さん» 逆叉さん、初めまして！お返事がとんでもなく遅くなってしまい、申し訳ありませんでしたm(__)mリクエスト、承りました！しばらくお時間をいただきますが、よろしくお願いします(^^♪ (2022年11月21日 0時) (レス) id: 4416da2808 (このIDを非表示/違反報告)
逆叉(プロフ) - 初めまして！りとさんの書き方大好きで、気に入ったお話を何度も読み返しています…(*^^*)もしよろしければ、三馬鹿船長のロー、キッド、ルフィで夢主と絡ませて欲しいです！3人では大変でしたら、この中の誰かだけでも大丈夫です！ご検討頂けたら幸いです。 (2022年10月10日 23時) (レス) id: 6858122218 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうなぎ(プロフ) - 本当に素敵な作品でした！ スマートにあれこれと優しく気を回してくれるサンジくんのラストのセリフが「好きだ」と真っ直ぐなのがとてもたまらないです！今回もありがとうございました。 (2022年9月23日 22時) (レス) @page21 id: ca7d16e763 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：りと | 作成日時：2021年8月13日 2時
