あと少しの【ペル】 ページ11
「Aさん」
木陰で本を読んでいた彼女に声をかける。少し驚いたように、それでいて、嬉しそうに笑う彼女が、ページに栞代わりの鳥の羽をはさんだ。
「ペルさん、また来てくれたんですか？」
「ええ、訓練が少し早く終わりましたので」
彼女の兄はアラバスタでも屈指の実力者であるチャカ殿であり、年の離れた彼女をとても大切にしていることは王都の皆が知っている事だった。
艶のある黒髪に、凛とした顔立ち。チャカ殿同様に心根の真っ直ぐな、優しく賢い人である。
「お疲れでしょう？ご迷惑でなければ、お茶でも飲んでいかれませんか？」
「いえ、申し出は有難いのですが…」
「そう…」
少し寂しそうに眉を下げた彼女に、胸が高鳴った。俺と共に過ごす時間を楽しみにしてくれていたのだろうか？そう思うと、胸に暖かいものが広がる。
「代わりと言ってはなんですが…外へ行きませんか。私の背に乗って」
「え？」
驚いたように彼女の目に、少し馴れ馴れしすぎたか、と後悔した。彼女の兄から、彼女がいつか俺の背に乗ってみたいと呟いていたと聞いてのことだったが…。
「いいのですか？」
「え？」
普段は理知的な光を宿した落ち着いた瞳が、期待と好奇心にキラキラと輝いていた。初めて見るその表情に、触れたいという衝動が沸き起こる。それを抑えて、俺は微笑んだ。
「あなたさえ、よろしければ」
そう言って能力を発動させる。大きな羽を広げると、彼女は大きな目をさらに大きくしていた。
「…怖くはありませんか？」
「まさか！」
彼女は何度も首を横に振った。
「この国を守る守護神のお姿をしてますもの。それに、なにより、ペルさんですから」
普段は月のような微笑みを浮かべるあなたが、太陽のように笑う。その笑顔がたまらなく愛おしい。
(その笑顔に躊躇いなく触れられる権利が、俺にあれば良いのに)
彼女とはまだよき友人止まりだ。周囲からは早く思いを告げてしまえ、と急かされているが、それがたまらなく怖い。情けないことだが。
どうぞ、としゃがんだ俺の背に、確かな重みと温かさを感じる。
「…重くありませんか？」
「いいえ、全く」
俺は大きく羽ばたいた。背中からは楽しそうな彼女の声がする。
(ああ、あなたが好きだ)
国のために命を捨てる覚悟も、格上に挑む勇猛さも、人並み以上だと自覚している。
だが、今の俺は、背中の貴方にたった3文字の言葉を伝える勇気が欲しくてたまらない。
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りと(プロフ) - 箱さん» お返事が遅くなってすみません！箱さん、こちらこそ素敵なコメントをありがとうございます。最近なかなかいい作品が出来ていなくて心苦しいところですが、これからも応援していただければ嬉しいです！ (5月15日 1時) (
レス) @page26 id: 4416da2808 (このIDを非表示/違反報告)
箱 - ステキな作品を書いてくれてありがとうございます (2023年2月23日 22時) (レス) id: e97eef8072 (このIDを非表示/違反報告)
りと(プロフ) - 逆叉さん» 逆叉さん、初めまして！お返事がとんでもなく遅くなってしまい、申し訳ありませんでしたm(__)mリクエスト、承りました！しばらくお時間をいただきますが、よろしくお願いします(^^♪ (2022年11月21日 0時) (レス) id: 4416da2808 (このIDを非表示/違反報告)
逆叉(プロフ) - 初めまして！りとさんの書き方大好きで、気に入ったお話を何度も読み返しています…(*^^*)もしよろしければ、三馬鹿船長のロー、キッド、ルフィで夢主と絡ませて欲しいです！3人では大変でしたら、この中の誰かだけでも大丈夫です！ご検討頂けたら幸いです。 (2022年10月10日 23時) (レス) id: 6858122218 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうなぎ(プロフ) - 本当に素敵な作品でした！ スマートにあれこれと優しく気を回してくれるサンジくんのラストのセリフが「好きだ」と真っ直ぐなのがとてもたまらないです！今回もありがとうございました。 (2022年9月23日 22時) (レス) @page21 id: ca7d16e763 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：りと | 作成日時：2021年8月13日 2時
