Say Something【メローネ】 ページ18
その日のアジトは誰も笑わなかった。
ソルベもジェラートも互いに黙ったまま、俯いている。ホルマジオは冗談ひとつ飛ばさないし、イルーゾォは鏡の中から出てこない。プロシュートはいつもより多くタバコを吸っているし、ペッシは嗚咽を抑えきれずに泣いていた。ギアッチョは頭を抱えて黙っているし、リーダーは唇を噛み締めていた。
「A…」
ペッシが鼻声で名前を呼んでは、またボロボロと涙をこぼす。
「……」
暗く重い雰囲気のアジトのもうひとつの部屋にAは眠っている。
俺はこの雰囲気に耐えかねて、そして、二人きりになりたくて、その部屋の扉に手をかけた。ギィ、と開いた扉のむこうはギアッチョの氷でヒヤリとしていた。
「A、入るよ」
中に入ると、黒い箱の中に彼女は眠っている。青白い顔、色のない唇、俺のとは違う濃い色の瞳は瞼の下に隠れたままだ。
「寒くないか?」
返事はない。
「ギアッチョ、こんなに冷やしてどうするつもりなんだろうな?」
やはり、返事はない。
「なぁ、A……なんとか言ってくれよ」
静かな部屋のなかで、俺はAの顔に触れた。氷の冷たさとは違う、触れた場所から温もりを奪うような冷たさを感じた。
「俺は、あんたを諦めようとしてるんだぜ」
黒い箱のそばに跪くと、俺はそっともう動くことは無い彼女の唇に触れた。
「あんたがいるなら俺はどこにだって行ったし、あんたが望むなら俺はあんたの男になった」
なあ、と顔を近づけても、もうAの頬は赤くはならない。
「なぁ、分からないんだ」
ぽたり、と水滴がAの頬に落ちた。ギアッチョの氷が溶け始めたのだろうか。
「理解できないんだ」
さらにもう1粒と水滴が落ちる。流れたそれは、まるでAが泣いているように見えた。
「やっと……この気持ちに向き合えるようになったんだ。人を好きになるってことが、ようやく分かってきたんだぜ?」
目の前が霞んで仕方がない。Aの頬に落ちた水滴は、少しずつ凍っていく。
「なのに、どうしてあんたとさよならしなくちゃいけないんだ」
絶対零度の空間で、俺の情だけが啜り泣く。
思い出すのはAのことばかりだ。その全てが優しくて、暖かかった。初めて感じた『愛情』だった。
眠っているAの頬に触れる。
「なぁ、ずっと言えなかったんだけどさ……」
そっと冷たい唇にキスを落とした。
「……愛してたよ、A」
ファミリーネーム【空条承太郎】→←古風な男【リゾット・ネエロ】
295人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「短編集」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
りと(プロフ) - ∴さて、どこへ行こうか。さん» リクエストありがとうございます!返品が遅くなってしまい、大変申し訳ありません<(_ _)>リクエストの方、承りました!ここではお話がいっぱいになってしまいましたので、続編の方で取り扱わせて頂きたいと思います(^^♪ (2021年8月23日 23時) (レス) id: 4416da2808 (このIDを非表示/違反報告)
りと(プロフ) - ?さん» ?さん、リクエストへの返信が大変遅くなってしまい申し訳ありませんでした<(_ _)>リクエスト承りました!ここではお話がいっぱいになってしまいましたので、続編の方で書かせていただきますヽ(*^^*)ノ (2021年8月12日 0時) (レス) id: 4416da2808 (このIDを非表示/違反報告)
りと(プロフ) - モカさん» 返信がとても遅くなってしまい、申し訳ありません!リクエスト、承りました! (2021年7月19日 22時) (レス) id: b238753ec9 (このIDを非表示/違反報告)
∴さて、どこへ行こうか。 - リクエストです。普段甘えない花京院典明の恋人(夢主)が甘える、という内容なのですがよろしいでしょうか?出来れば生存ifを希望します… (2020年11月6日 19時) (レス) id: a195df0bb5 (このIDを非表示/違反報告)
?(プロフ) - リクエなのですが、露伴先生と病弱な夢主が恋人関係なのですがその病弱な夢主が意外にも悪徳的なスタンドを持っている事を知って何があったのかと聞くと泣きながら過去にあった親からの虐.待などを夢主が語っていき、その日は思う存分甘えされるみたいなのをください! (2020年3月27日 16時) (レス) id: d243ef7454 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:りと | 作成日時:2019年1月9日 21時