感情【イチジ】 ページ50
当たり前だと思っていた。
自分は人より遥かに強いという自負があった。そして、弱さは悪だった。
「…申し訳……ございません……」
だから、Aを傷つけることも当然だと思っていた。
だが、それが変わってしまった。自分より遥かに劣っているはずのサンジに助けられたあの日から、俺の思考にモヤが生まれた。
(なんなんだ、これは？)
そのモヤは今まで1度も経験した覚えのないものだった。
俺の背後に黙って控え、じっと耐え忍ぶように俯くその姿に、今までなら不満だけしか感じなかった。なのに、今はその不満にモヤがかかって、鈍る。
「お前はなぜここにいる」
「…！申し訳ありません…！」
怯えたように頭を下げるA。俺が近づいた瞬間、Aはハッとした顔で頭を守った。
「…何をしている？」
「…！ご、ごめんなさい！」
慌てて姿勢を正すAを見て、胸がギュウと締め付けられるような心地悪さを感じた。
(…？痛い……？)
少し前の俺ならば、問答無用で殴り飛ばしていた。否、そもそも初めのような質問はしない。
「なぜ謝る」
「え……？な、なぜって…」
Aはギュッとエプロンの裾を握りしめた。この仕草の意味がわからないのに、胸は更に痛みを増していく。
「私が…悪いので……」
急に知りたくなった。俺の目の前にいる『弱い存在』が、なぜ俺の思考にモヤをかけるのか。そして、このモヤはなんなのか。
俺はそれ以来、Aに話しかけることが増えた。なんでもない話を振って、それに答えさせるだけ。無駄な時間のはずなのに、しないとなぜか気分が落ち着かない。そもそも、気分などというものも無かったのに。
「…」
ある時、何気なくAに向かって手を伸ばした。弱い存在に何故か触れたくなった。
その瞬間、Aの喉から小さな悲鳴が漏れた。また、胸に締め付けられるような不快感が襲う。そして、よく分からない黒いモヤが俺を苛む。
(これはなんだ…？)
伸ばした手を下ろし、俺は胸に手を置いた。
心臓を掴まれたような痛みだった。
頭を過ぎるのはかつて当たり前のようにAに手を挙げていた俺。泣いて許しを乞うAが次第にただ諦めたように謝るようになるまでの記憶。心臓が痛いほど高鳴り、血の気が引いていく。
(なんてことをしてしまったんだ)
一瞬頭の中に過ぎった言葉に、自分の事ながら信じられない気分だった。
これが感情なのか。
気が付かなければよかった。
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りと(プロフ) - こゆさん» お返事が遅くなってしまい、すみません<(_ _)>リクエスト承りました！ここではお話がいっぱいになってしまいましたので、続編の方で書かせて頂きますねヽ(*^^*)ノ (2021年8月11日 19時) (
レス) id: 4416da2808 (このIDを非表示/違反報告)
こゆ - 夢主がロシナンテと女性が仲良さげに話していて嫉妬する話を見て見たいです！ (2021年8月9日 23時) (レス) id: 0874e209a6 (このIDを非表示/違反報告)
りと(プロフ) - マリコさん» マリコさん、リクエストありがとうございます！しかし、残念ながらこのリクエストは受けられません…すみません<(_ _)>プリキュアに関する知識がないことや、私自身の地雷に抵触する部分がありますので…|ω･`)他の短編集でのリクエストをオススメします(´∀｀*) (2021年7月31日 1時) (レス) id: 4416da2808 (このIDを非表示/違反報告)
りと(プロフ) - 嫁子ちゃん。さん» コメントありがとうございます！そう言っていただけると、本当に励みになります(^^♪修正・加筆後に、また新たなお話を追加していく予定ですので、待っていていただければ嬉しいです(*´∀｀) (2021年7月31日 1時) (レス) id: 4416da2808 (このIDを非表示/違反報告)
りと(プロフ) - ☆kon☆さん» コメントありがとうございます！そう言っていただけて嬉しいです(>人<) (2021年7月31日 1時) (レス) id: 4416da2808 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：りと | 作成日時：2018年1月16日 22時
