絵葉書【ジュラキュール・ミホーク】 ページ49
貴方から絵葉書がきた。
新聞の束から覗いた鮮やかなそれは、暗いシッケアールではひときわ目をひくものだった。
「…？」
どうやら夏島の浜辺を描いた絵葉書らしい。カリビアンブルーの海と砂浜、その浜辺沿いを彩る緑のヤシと赤い花─なかなか洒落ている代物だ。
「誰かしら…」
鮮やかな色の葉書を裏返す。書かれた名前はあの人のものではなかったけれど、その筆跡はあの人のものだ。
(珍しいこともあるものね…)
名前の横には、あの人の文字で「暑い所だ」とだけ。あの人らしい文言だ。
だが、こうして私を置いて遠出してしまうことはよくあっても、彼がこんな風に葉書を送ってきたのはこれが初めてだ。
「手紙か？」
「あら、ペローナちゃん」
もう見慣れ始めたピンク色の髪の少女は、目を細めて私の手元を覗き込んでいる。
「それ、誰からだ？」
「フフ、誰でしょうね」
宛名を見せると、ペローナちゃんは眉をひそめる。
「なァんだ、あいつからだと思ったのに！帰ってきたらからかってやろうと思ったのに！」
「期待が外れた」と膨れるペローナちゃんに、「ほどほどにね」と微笑んで、私は城の中に戻った。
次の日も、また絵ハガキが届いた。今度は、秋島らしい。鮮やかな赤や黄色で彩られた木々の絵が描かれている。宛名は同じ人、文面は「過ごしやすい」だけ。
その次の日もまた届いた。今度は冬島。真っ白な雪景色を描いた絵ハガキは、少し濡れてしまったのか文字がにじんでいる。「もうじき戻る。」と書かれた文面に、私はちょっと嬉しくなった。
そして、ふっつりと葉書が途絶えた。
(まだ…あの人は帰らない)
気まぐれな人だから、あの葉書も飽きてしまっただけなのだろう。そうはわかっていても、不安になる。
どこかで何か事件に巻き込まれたのだろうか？いや、でも彼の場合はそういったことに巻き込まれても平然と切り抜けてくるはずだ。
なら、海難事故？ああ、大嵐なんかに巻き込まれていたら危ないかもしれない。人は自然には勝てない。
私は、そう思いながら、冬島の葉書を見つめていた。
目を閉じると、貴方の記憶がよみがえる。私の名を呼んで、少しだけ優しい顔をしたあの人を思いだす。
(いやね…)
私ったらいつからこんなに憶病になったんだろう。ポロポロと落ちる涙が、貴方の書いた文字をにじませる。
「ミホーク…」
彼の「もうじき戻る」がじわりと溶けた。
「早く帰ってきて…」
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りと(プロフ) - こゆさん» お返事が遅くなってしまい、すみません<(_ _)>リクエスト承りました！ここではお話がいっぱいになってしまいましたので、続編の方で書かせて頂きますねヽ(*^^*)ノ (2021年8月11日 19時) (
レス) id: 4416da2808 (このIDを非表示/違反報告)
こゆ - 夢主がロシナンテと女性が仲良さげに話していて嫉妬する話を見て見たいです！ (2021年8月9日 23時) (レス) id: 0874e209a6 (このIDを非表示/違反報告)
りと(プロフ) - マリコさん» マリコさん、リクエストありがとうございます！しかし、残念ながらこのリクエストは受けられません…すみません<(_ _)>プリキュアに関する知識がないことや、私自身の地雷に抵触する部分がありますので…|ω･`)他の短編集でのリクエストをオススメします(´∀｀*) (2021年7月31日 1時) (レス) id: 4416da2808 (このIDを非表示/違反報告)
りと(プロフ) - 嫁子ちゃん。さん» コメントありがとうございます！そう言っていただけると、本当に励みになります(^^♪修正・加筆後に、また新たなお話を追加していく予定ですので、待っていていただければ嬉しいです(*´∀｀) (2021年7月31日 1時) (レス) id: 4416da2808 (このIDを非表示/違反報告)
りと(プロフ) - ☆kon☆さん» コメントありがとうございます！そう言っていただけて嬉しいです(>人<) (2021年7月31日 1時) (レス) id: 4416da2808 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：りと | 作成日時：2018年1月16日 22時
