酒の味【シャンクス】 ページ18
「うまい酒を持ってきた」
そう言って、Aは酒瓶を俺に渡した。
「これでも飲め」
淡々とそう言うと、Aは同じ銘柄のビンを取り出してどかっと床に座り込む。
「レイさんには言わないでやるよ」
そう言って、Aは微笑んだ。
男みたいな言動だが、Aの姿は正直かなりの美人だ。簡単に男を誑かせる類の魔性の美がある。そのくせ、本人はそういう面には疎いから面白い。
「おい、シャンクス」
名前を呼ばれてはっとした。不思議そうな視線と目が合う。
「なんだい、飲まないのか?」
見つめられる恥ずかしさに顔に熱が集まる。俺は慌てて酒瓶を開けて、酒を流し込んだ。
「で?盗み食いをやったんだってね」
口ごもる俺にふっといたずらっぽい笑みが向いた。
「レイさんがご立腹だったよ。再犯だってね?」
Aはそういって、ぐっと酒瓶をあおった。つぅ、と口から流れ落ちる酒のしずくがやけに色っぽい。
「ま、そんなことは話しても面白かないし…やめるか」
「なんだよ、お前から話振っといて!」
「正直、あんたの盗み食いの話は何度も聞きすぎて飽きちまってるんだよ」
Aは酒のせいか、すこし赤くなった顔のまま俺の方に向いた。
「代わりに、そうだな…女の話なんてどうだい?酒の席じゃよくする話の定番だろ?」
お前だよ、そう言いそうになる口に酒を流し込む。
「まだいねェ。そういうお前は?」
「私か?そうだな…今は尊敬する人は多いが、そういうのは全く」
わかっていた回答だが、少しがっかりしてしまう。男と薄暗い部屋でこんな話を何の他意もなく振っちまう辺り、相当意識されてないんだな…と思う。
(でも…"そういう"のが誰もいないなら、俺を意識してくれたっていいだろ)
酔っているせいか、思考は大胆になっていく。俺は少しAに距離を詰めた。
「さっきの…やっぱり嘘だ」
「へぇ、じゃあどんなのが─」
「お前」
俺の言葉に、Aが眼を見開いた。すぐに冗談が過ぎたと後悔し、誤魔化すように笑った。
「…ハハ、悪ィ、変なこと言った」
「…そうだな」
そう言ったAの声が震えている。はっと顔を見れば、その顔は酔いとは違う理由で赤く染まっている。
「あんたが変な事言うから、せっかくの酒の味がわからなくなっちまった」
へにゃりと笑ったAの頬に、半ば本能的に触れていた。
「シャンク─」
唇を重ねれば、かすかにうまい酒の味がした。
贈り物の意味【イゾウ】 リクエスト・動物大好きさん→←初めて【ポートガス・D・エース】
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りと(プロフ) - こゆさん» お返事が遅くなってしまい、すみません<(_ _)>リクエスト承りました!ここではお話がいっぱいになってしまいましたので、続編の方で書かせて頂きますねヽ(*^^*)ノ (2021年8月11日 19時) (レス) id: 4416da2808 (このIDを非表示/違反報告)
こゆ - 夢主がロシナンテと女性が仲良さげに話していて嫉妬する話を見て見たいです! (2021年8月9日 23時) (レス) id: 0874e209a6 (このIDを非表示/違反報告)
りと(プロフ) - マリコさん» マリコさん、リクエストありがとうございます!しかし、残念ながらこのリクエストは受けられません…すみません<(_ _)>プリキュアに関する知識がないことや、私自身の地雷に抵触する部分がありますので…|ω・`)他の短編集でのリクエストをオススメします(´∀`*) (2021年7月31日 1時) (レス) id: 4416da2808 (このIDを非表示/違反報告)
りと(プロフ) - 嫁子ちゃん。さん» コメントありがとうございます!そう言っていただけると、本当に励みになります(^^♪修正・加筆後に、また新たなお話を追加していく予定ですので、待っていていただければ嬉しいです(*´∀`) (2021年7月31日 1時) (レス) id: 4416da2808 (このIDを非表示/違反報告)
りと(プロフ) - ☆kon☆さん» コメントありがとうございます!そう言っていただけて嬉しいです(>人<) (2021年7月31日 1時) (レス) id: 4416da2808 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:りと | 作成日時:2018年1月16日 22時